大河ドラマもびっくりの、世紀を旅するエンタテインメント
日本美術というと、畏まって見なければならないと思っている人(最近少数派ではないかと思うけれど)もいるかもしれない。実際、展覧会場で作品についてああでもない、こうでもないと話をしていると、監視員に注意されることも少なくないので、「無言で畏まって見ろ」という圧力もないわけではない。
その一方で、映画やテーマパークと同じ土俵で真っ向勝負しても負けない、という自負の下に企画される展覧会もある。いま東京国立博物館で開催されている、特別展「京都 洛中洛外図と障壁画の美」だ。
「京都でも見ることのできない京都」と銘打たれた今展の狙いは、現在では失われてしまった過去の京都の景観や空間を、美術作品とそれを補完する映像で「体感」しよう、というもの。京都というと、反射的に「平安時代」「『源氏物語』の舞台」と思ってしまうかもしれないが、ここでは室町時代末期から江戸時代初期、現在見る京都の原型が形作られていく時代に焦点を当てている。
つまり、足利将軍に代わって織田信長や豊臣秀吉らが台頭し、その意を受けた狩野永徳や長谷川等伯が、城郭建築を金碧障壁画で埋め尽くし、やがて徳川家康が江戸を拠点に支配を確立、浮世の諸相を描く「風俗図」が花開く、政治的にも美術の上でも激動の時期をテーマにしている、ということだ。そして最後は二条城での大政奉還シーンまで突っ走ってしまうのだから、大河ドラマもびっくりの、世紀を旅するエンタテインメントなのである。
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2013.10.26(土)