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深酒して、昼まで寝ている自分が情けなかった

 自分よりも芝居の上手い人、容姿の整った人がごまんといる世界。自分の武器を持たなければと思い、アクションを強みにしようとした時期もあった。

「30代の後半になるまでは、自分の意識は完全に仕事に向いていました。たぶん30歳前だったと思うんですが、親友が結婚して、近所で子育てをしていたことがあって。

 たまにお子さんと一緒に居るところを見かけたりすると、休みの前日に深酒して、昼までソファーで寝たりしてる自分が情けなくなって……。『私はこんなに自堕落な生活を送っているのに、彼女は今日も5時とか6時に起きて、一つの生命を育ててるんだよなぁ』と思って焦ったりもしました。

 でもだから『結婚しよう』とか『子供が産みたい』と思うのではなくて、私の場合は『私も何かを生み出さなきゃ!』という気持ちになって、特に演劇にのめり込んでいきました」

 映像の仕事を続けながら、33歳で演劇ユニット「プロペラ犬」を立ち上げ、10代の頃から憧れていた演劇に没頭していった。「このまま一生結婚せず、子供も産まずに、仕事に邁進しながら生きていくのかな」などと、将来のことは薄ぼんやり捉えていた。

「そんな中で、演劇を通じてたまたま旦那と出会ったんです。結婚したのが42歳だったから、私は正直、『今から子供はできないんじゃないかな。それでもいいか』と思っていました。

 でも旦那は長男で、『私たちに子供ができなかったら、旦那のご両親は孫の顔を見られないんだな』って。そういうプレッシャーはちょっとあったんです。

 だから、とりあえずできることは全部やって、それでも無理だったらしょうがない。2人で楽しく生きていこうみたいな感じで、できることはやってみることにしました」

2022.09.27(火)
文=菊地陽子
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=面下伸一(FACCIA)
スタイリスト=山下友子