この記事の連載

 子育てエッセイ『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』の続編『水野美紀の子育て奮闘記 今日もまた余力ゼロで生きています。』を上梓したばかりの水野美紀さん。

 43歳で産んだ子供は、今年5歳になった。再来年は小学生だ。家のことも、子育ても、仕事も、すべて全力。“余力ゼロ”であるはずなのに、これまた全力で、抱腹絶倒でときにホロリとさせる、イキイキとした文章を綴っている。

 「子育てを始めると、自分の人生を追体験させられるというか。いかに自分が駄目人間かを思い知らされるんです」と話す水野さんは、文章を書く際に、自分の愚かさや弱さ、未熟さをきちんと受け止めている。自分を客観視する視点も秀逸だが、その理由を本人は、「テレビドラマで、視聴者から憧れられる役を演じたときの反動もあるかもしれない」と分析する。

» 【前篇を読む】「連ドラでいい役をもらうのが目標」“仕事人間”だった水野美紀が産休に入って気がついたこと


子育てでは、自分のダメな部分が露呈してしまう

「1990年代から2000年代にかけては、テレビドラマがものすごく盛り上がっていて、とくにヒロインは、私とはまったくかけ離れたような、誰からも好かれるちゃんとしたキャラクターが多かったんです。頭も切れて美人で性格もいい非の打ち所のないヒロインが、もう嘘みたいに美しい恋愛をしたり……。

 それはそれで、夢があって素敵な世界なんですが、現実はそんな綺麗事では進んでいかないから。

 実際、子育てをしていると、生活にまったく余裕がなくなるので、自分の駄目なところが隠しきれずに出てしまうんです。子供に向かって、『ちゃんと片づけなさい!』とか偉そうに言ってるけれど、自分の子供時代を思い出すと、『そんなこと言える立場なの?』ってもう1人の自分が語りかけてくるんです(笑)。

 本当にすぐテンパります。すぐ頭に血がのぼるし、口うるさくしちゃうし、それでいてすぐ忘れちゃう。毎日『もう笑うしかない』っていう状況に追い込まれていることが多いです」

2022.09.27(火)
文=菊地陽子
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=面下伸一(FACCIA)
スタイリスト=山下友子