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私にはのんびりダラダラする権利がある!

 妊娠がわかったとき、水野さんは思いもかけない出来事すぎて、喜びよりも驚きが先に立った。その傍らで、旦那さんは大喜びしたという。

「旦那も、親になりたい願望が強かったわけではなくて、私と結婚するまでは、『1人で生きていこう』と考えていたんじゃないかと思います。たまたま、お互いに“結婚”に気持ちが動くタイミングで出会っただけで、旦那も私も、『生き方はこうじゃなきゃ』みたいな考えとか計画性はまったくない。ただ、流されるまま生きてる感じです。

 だいたい、妊娠したときも、最初は実感がまったく湧かなかった。ドラマや映画で、子供がお腹に宿ったとわかった瞬間にお腹を押さえて、『この子が愛おしくてしょうがない』と、突然自分の中の母性に目覚めるようなシーンって、よく見るじゃないですか。

 でも、私はまったくピンとこなくて……。妊娠すると身体も変わるし、その時点でキャンセルしなきゃいけない仕事も出てきて、『この先どうなっていくんだろう?』という不安もありました」

 ところが、いざ産休に入ってみると、それまで感じたことのないような幸せな時間が訪れた。

「それまでは、家にいてもずっと、頭の片隅では必ず仕事のことを考えていたんです。でも、産休に入ると、仕事のことは全部忘れて、のんびりしても罪悪感がなかったんです。『私にはのんびりダラダラする権利があるんだ!』と思って、自分で自分のことを徹底的にケアできた。

 大好きなお酒やコーヒーや辛いものを摂取できないつらさはありましたし、高齢出産なので、体重コントロールを本当に厳しく言われたことが結構きつかったですが、それ以外は、本当に自分と生まれてくる子供のことだけを考えていればよかった。

 43歳で、一旦仕事をストップしたけれど、その時点でもう25年ぐらい働いていたこともあって、また仕事を再開できる見通しがついていたので、そこの安心感もありました。仕事も遊びもさんざんやって、一段落して、『ここからが、人生の第2ラウンドかな』と思えたんです」

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水野美紀(みずの・みき)

1974年、三重県生まれ。女優、作家・演出家。出演作に映画『踊る大捜査線』シリーズ、ドラマ「探偵が早すぎる」シリーズ、テレビ番組「突然ですが占ってもいいですか?」(フジテレビ系)など。2017年に第一子を出産。その他の著書に、『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』『ドロップ・ボックス』『私の中のおっさん』『プロペラ犬の育て方』がある。

水野美紀の子育て奮闘記 今日もまた 余力ゼロで生きてます。


定価 1,540円(税込)
朝日新聞出版
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次の話を読む「最初は大変すぎて覚えてない」 俳優業と子育てを両立する 水野美紀のライフスタイル

2022.09.27(火)
文=菊地陽子
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=面下伸一(FACCIA)
スタイリスト=山下友子