グラニフの考える「豊かな暮らし」とは
――御社が掲げる「グラフィックを通じた豊かな暮らしの提案」というのも気になります。
モノを提供するだけではなく、モノによってコミュニケーションが生まれたり、体験が生まれたり、いい時間が生まれたり、いい暮らしを生み出す。先にお話した、コンテンツ企業を目指すということに繋がりますよね。
グラニフで扱うグラフィックデザインは実に多種多様で、キャラクターは600種類以上あります。いちいち突っ込みたくなるようなユニークなキャラクターも多く(笑)、その突っ込みからコミュニケーションが生まれる。
身につける服やグラフィックは、自分のプレゼンテーションです。自分を表現することは、自分らしく生きることに繋がります。暮らしそのもの、生き方そのものに価値を提供できるような、そういう企業にしていきたいと思っています。
――勝部さんにはいろんな経歴があって、常にチャレンジをしている印象があります。そういう活力はどこから湧いてくるものですか? 先行きが不透明な日本経済で未来に不安を感じている人も多いと聞きますが、勝部さんならではのアドバイスをいただけますでしょうか。
日本の経済、そして将来への不安……、すごい話題が来ましたね(笑)。
この先も経済格差は、どんどん広がっていくとは思います。でも日本がどうこうより、まずは個人としてどう生きたいのか、どういった時に幸せを感じるのか、自分の価値観を大事にして生き方を決めてみるのはいかがでしょう。
僕は生活の半分くらいを趣味のクライミングに費やしています。仕事もすごく楽しいし、クライミングもすごく楽しい。自分が好きなこと、楽しいことを追求していると自然と周りがついてきてくれるものです。
クライミングが好きで探求していたら、そういう人が集まってきて、その中でとても心地よくいられる。仕事も最初は一人で始めたけれど「僕はこうしたい、これが楽しい」というのを発信していると、やがてメンバーが1人増え、2人増え、共感で繋がった組織ができあがる。すごくハッピーなことです。
周りの目や、日本の状況、世界情勢も重要ではありますが、とりあえずそれは目の端に置きつつ、まずは「自分はこうありたい」「これが幸せ」と思えることを追求する。それで十分だと僕は思います。
――趣味のクライミングに没頭することで何か変化はありましたか?
間違いなく世界が広がりました。特に面白いと感じるのは……断崖絶壁を登っていると「ここで落ちたら死ぬか大怪我をする」という瞬間があるんです。
登っている時間は長くても1分程度なのですが、その中に真実の瞬間があって。その瞬間に宇宙が広がる。身ひとつ、道具は靴だけで、ごまかしがきかない中で自分の手足を頼りに登っていく。なんの言い訳も、ごまかしも効かないこの時間がすごく好きなんです。
周りで見ている人たちの応援にも幸せを感じます。この快感を知ってしまうと誰もが永久に挑戦し続けたくなるんじゃないかなあ。40歳を過ぎてからクライミングを始めているので、若い人の成長には敵いませんが(笑)。
僕は探求型なので、永久に成長できる趣味を見つけたと思っています。
――その命の危機に対する緊張感は日常生活にも影響しそうですね。
そうですね。全身の神経が研ぎ澄まされるので、普段の生活でも勘が鋭くなったと思います。何より好きなことに没頭する時間を持つことで、生活がすごく豊かになりました。
――最後に、絵本についてお話を戻させていただきます。これからも定期的に絵本は出版される予定ですか?
弊社には人気のキャラクターがたくさんいますので、どんどん出していきたい。「ビューティフルシャドー」を使った親子で楽しめる仕掛けの表現や、「海の生き物」シリーズ、「猛獣」シリーズも作りたい。「スシロケット」篇や「スシオバケ」篇など「スシトレイン」をシリーズ化したいという気持ちもあります。アイディアもネタも泉のようにありますよ(笑)。
ゆくゆくはアニメ化もしたいし、グラニフランド的なテーマパークも造りたい。スシコースターやスシゴーランド、ビューティフルシャドー城とか、将来的にはそこまで広げたいですね。ハリウッドあたりに造れたら最高ですね(笑)!
» CREA WEBメンバー限定!「グラニフの人気キャラクター スシトレインのグッズ」をセットで3名様にプレゼント(2022年8月12日[金]23:59まで) 応募期間は終了しました。
おさんぽスシトレイン
さく・え たいっちゃん ぶん はせがわさとみ
出版:303BOOKS
定価:1,100円
グラニフ各店、全国書店およびネット書店で発売中。
https://303books.jp/sushi-train/
グラニフ
2001年にTシャツ×アートをテーマに誕生し、個性豊かなグラフィックデザインを展開し続ける人気ストア。2021年にユニット・ワン代表の勝部健太郎氏をブランドディレクターに迎えデザインTシャツストアから、グラフィックライフストアへと進化。
勝部健太郎(かつべ・けんたろう)
新生銀行、メルセデス・ベンツ、ユニクロなどの各業界でのビジネス構築やマーケティングを経て、2010年に株式会社ユニット・ワンを設立。「MUJI passport 」(株式会社良品計画)、「Coke On」(日本コカ・コーラ株式会社)等の企画、制作、ディレクション、バルミューダ株式会社のブランドディレクターとして手腕を発揮。2021年7月にグラニフのブランドディレクターに就任。
2022.07.29(金)
文=天野真由美
撮影=深野未季