グラフィックアイテムを展開する「グラニフ」から、累計販売数20万点の大人気キャラクター「スシトレイン」の絵本が誕生。
アパレル企業による出版ビジネスへのアプローチとは何を意味するのか? グラニフブランドディレクターの勝部健太郎さんに、絵本を出版した経緯から「グラニフ」が掲げる“豊かな暮らしの提案”についてお話を伺いました。
口ずさみたくなる言葉を慎重に選びました
――アパレル企業の御社から、なぜ絵本を?
弊社で扱うアイテムの中には、「はらぺこあおむし」をはじめ、絵本作品とのコラボレーション商品が多くありますが、それらには魅力的な画だけではなくてストーリーがある。だからこそ、長く色々な方に愛され続けているのだと思うんです。
グラニフのオリジナルキャラクターを「服」というフォーマットの中で情報を凝縮し表現しています。凝縮された情報の外側にキャラクター設定やストーリー、お客様の想像も含めて余白があります。「絵本」というフォーマットを採用し、より広く深く情報を発信することで、今あるオリジナルキャラクターの魅力がもっと伝わり、もっと人気者になれるのではないか、好きになっていただけるのではないか、という思いがありました。
もう一つの大きな理由として、グラニフはTシャツのブランドからスタートし、今はアパレルだけでなく雑貨や食器、スニーカーなど取扱い商品の幅を拡張していますが、ゆくゆくは現状の「プロダクト」の会社から「コンテンツ」を提供する会社になっていきたい。そのきっかけとして、絵本にチャレンジしました。
絵本はフィジカルな物体ですが、親御さんがお子さんと一緒に絵本を読む時間を提供できる。楽しい体験や時間を提供できるというのは、すごく嬉しいですね。
加えて全国の書店でお取り扱いいただけるので、これまでグラニフをご存知なかったお客様にもタッチポイントが広がる。そういう観点からも魅力を感じました。
――実際に「おさんぽスシトレイン」の仕上がりをご覧になっていかがですか?
良いものができたと思います! 自信を持っておすすめさせていただきたいです。
――お寿司のキャラクターがとにかく可愛くて、文章のテンポが良くて、大人が読んでもほっこり温かな気分になりました! 作り手側としてこだわった点は何でしょう?
ビジュアルに関しては、まずページをめくっていってどきどきするような、パッと見で惹きつけられるインパクトのある絵作り。
ストーリー性を出すため、一枚の完結絵ではなく、物語の中での時間の流れをきちんと落とし込んでいくこと。
子ども目線になって読みやすくわかりやすく、かつ展開がドラマチックであること。
そして言葉選びも慎重に進めました。「ころころ てくてく」と、思わず口ずさみたくなる言葉を使用しています。なるべく買いやすい価格設定にすることにも努めました。
――発売記念特典のぬり絵もすごくいいですね!
本を読んだ後に親子で楽しんでいただけたら、と。正確さは気にせず、思いのままに自分の好きな色で自分だけのスシトレインを作ってほしい。
そうすることで愛着が湧きますよね。そして、お子さんがお寿司に興味を持ち、外に出て初めてお寿司を食べる……そんな体験をしていただけたら嬉しいです! 読み手を通じてどんどん立体的な体験に繋がっていくというのが理想です。
2022.07.29(金)
文=天野真由美
撮影=深野未季