音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する。

 2013年10月にリリースされる中から、彼らが太鼓判を押す楽曲はこちら!

【2013年10月に流行る曲】
黒木渚「はさみ」

現在のチャート上位はアイドルとアニソンの2大勢力が支配

山口 翌月のヒット曲を予見して解析するという、よく言えば挑戦的な、ぶっちゃけると無謀なテーマの本コラム。前回はmiwaの「Faraway/Kiss you」を採り上げました。結果は、オリコンランキングでは6位。前作とほぼ同程度のセールスだったようですが、この結果はどう捉えていますか?

伊藤 フィジカルのランキングをみると、やっぱりアイドル&アニソン強し、という感じですね。この週のトップ10も、miwa以外はアイドルとアニソンで完全に占めていますからね。逆に言うとアーティストmiwaは、シンガーソングライターとしてしっかりと存在感をアピールできたんじゃないでしょうか。

山口 立派なセールス結果ですよね。コンスタントにオリコン上位に入るアーティストは、最近なかなか出てきていませんから、貴重な存在だと思います。

“黒木渚”はボーカルの名前であると同時にバンドの名前!

山口 さて、今回は、黒木渚ときましたか! 驚きました。ものすごい“先物買い”ですね?

伊藤 来月のヒットを予見するっていうテーマなのに“先物買い”しすぎですかね? (笑)前回に引き続き、次なるヒット曲を探すべく、ネットで10月発売のシングルCDリリース情報をチェックしていたんですけど。そのとき、目に飛び込んできたのが黒木渚の「はさみ」。曲タイトルが気になったというよりは、アーティスト名の“黒木渚”。なんかどっか聞いた名前だなぁ~と思って、アーティスト情報をみたら“黒木渚”っていうのはバンド名らしい。そー言えば、いつだったか朝の情報番組かなんかでボーカルの女の子の名前とバンド名が一緒っていうのを紹介していたなぁ~と。その時は曲を聴いた記憶はないので、バンド名が“黒木渚”という話題性だけが先行していたんでしょうけど。まだシングル1枚とミニアルバムを1枚しか出していないし、インディーズなんですが、山口さんは“黒木渚”ってバンドを知ってましたか?

山口 Facebookで友人が話題にしていて、YouTubeを観たことはありました。福岡のバンドでしたよね?

伊藤 ですね。ファーストシングルは最初、九州限定リリースだったみたいですね。のちに全国リリースしたようですけど。

山口 古くはフォークソングの時代から、博多は音楽の街です。“めんたいロック”って言葉もあるくらい、多くの人気ロックバンドも輩出している。ライブハウスのマネージャーも熱い人たちが頑張っている。ストリートミュージシャンも多いんだけど、あの街では、通行人との距離が近い感じがするんですよ。通りすがりの人が観客になるという雰囲気。伝統と言うべきなのか、ミュージシャンが出てくるという土壌が今もある気がします。

伊藤 井上陽水から家入レオまで、時代を超えてシンガーソングライターを生み続けている街ですよね。

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2013.09.27(金)