大トリはアマゾンの熱帯雨林をめぐるカカオのバリエーション
コースの最後に登場する【アマゾニア】は、熱帯雨林アマゾンの生態系を表現したもの。カカオに代表されるテオブロマ属をフィーチャーした、デザートにあたる料理群です。カカオひとつをとっても、果肉やその種子(いわゆるカカオ豆)の皮、胚乳(カカオニブ)といった部位を使い分け、ジュース、ケーキ、ガナッシュ、ゼリー、ペーストなど、変化に富んだスタイルで提供されます。
味わいも、フルーティーな酸味や、媚薬を思わせる濃厚な味、ふんわりロマンティックな風味など多種多様。カカオという果実が、はるか昔から人々を魅了し続けてきたのもうなずけます。さらに、同じテオブロマ属のマカンボを使ったクレームブリュレ、コポアスのソルベなど、洗練されながらも野性味を感じる料理が並び、太古の自然が息づくアマゾンへの想像が掻き立てられます。
オリジナルの蒸留酒やリキュールで作るカクテルもおすすめ
ドリンクペアリングは、各料理に世界のワインを合わせる「ワールドペアリング」と、南米のワイン、マテルで開発したリキュールを使ったカクテルなどで構成される「サウスアメリカン テロワール」(ともに15,950円)、ノンアルコールペアリング(10,450円)も用意。特にユニークなのがカクテルで(単品オーダー可)、サトウキビの蒸留酒を使った「コスタヒルズ-藻類-リモチリ」は、食前酒におすすめ。美しいグリーンは何と青のりによるものだそうで(日本の青のりのような匂いはしません)、下皿と相まって海のイメージです。
食後酒にピッタリなのは、オリジナルのリキュール「カケ」にウイスキーを合わせたカクテル。カケは、アンデス高地で採取された20数種類の植物から作られたリキュールで、その薬草っぽいほのかな苦味がウイスキーとマッチします。仕上げにパロサントという香木の煙をまとわせると、アンデス山中の神秘的な雰囲気が漂います。
ここまでご紹介したのは、全体のほんの一部。「MAZ」は紛れもないファインダイニングですが、その料理は単に美味しいだけでなく、感情と思考を揺さぶります。食後は世界の見方が変わるかも。未知なるペルー、味覚の旅をぜひ体験してください。
MAZ(マス)
所在地 東京都千代田区紀尾井町1番3号 東京ガーデンテラス紀尾井町3F
電話番号 03-6272-8513
営業時間 17:00~23:00
定休日 火曜日
https://maztokyo.jp/
2022.07.16(土)
取材・文=伊藤由起
写真=橋本 篤、平松市聖
コーディネイト=江藤詩文