若い世代の成功を「悔しい」と思えたら、こんなに美味い酒はない
――承認欲求が高まる一面がある一方、何者かに「なる」手段は多様化していますよね。そういった変化を、ムロさんはどうとらえていらっしゃいますか?
インターネットからみんなが知る歌手が台頭してくるなんて誰も想像しなかっただろうし、色々なオーディション番組が増えてきて役者だって様々な形で出てくるでしょうね。どこかに所属せずとも、フリーでもできることが少しずつ証明されてきていますし、情報の発信の仕方・アピールの仕方・やり方ひとつでこんなに変わるんだなと思います。僕個人はすごく面白いなと感じています。
僕自身、「非同期テック部」の真鍋大度や上田誠から「若い世代から教わる」姿勢や「自分たちの成功体験を伝えることが新しい思い付きへの近道」という思考を学びました。だから、自分たちがやってきたことを言語化して、下の世代に渡そうとする行動自体が、僕たちのためになる。
僕らは上の世代から「教わる」ことしか叩き込まれていないけど、引っ張るだけじゃなく、自分から下の世代に「どう思う?」と聞きに行って教わることを参考にして、形にしていくことが非常に大切だと感じます。これからの日本のエンターテインメントというような大それたものを背負うつもりはないけど、自分が面白いものに携わったり思いつく側に行こうと思うのであれば、柔軟性をもって多様性を認めるのは絶対に必要。若い世代の成功例を聞くとワクワクするし、思いつかなかった自分を悔しいと思えたら、そのときに飲む酒ほど美味いものはないですよね。
――ご自身も刺激を受けて、進化していくというか。
進化というより、変化かな。「進化」というと成長していかなきゃいけないけど、後退したっていいんですよ。自分を変えて、その変わった自分を知る実験はこれからも続けていきたい。55歳くらいにはいい加減落ち着きたいから(笑)、そのためにもいまは色々実験期間。「もういいかな」と思えるまでは格好つけて「こんなことやりましたぜ。来てください」って言っていたいなと思います。
この前も野外劇「muro式.がくげいかい」をやって。悔しい気持ちの方がいまは大きいですが、やっぱりやっていかないと自分は(心が)死んじゃうなと改めて感じました。
2022.06.23(木)
文=SYO
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=池田真希
スタイリスト=森川雅代