「ケツを叩かれた」という感覚が存在しない世代に向けて

――以前、中村倫也さんが売れずに腐っていたときに「ムロツヨシさんの言葉で自分を見つめなおせた」と語っていらっしゃいました。ムロさんもかつて本広克行監督に同じことを言われたとか……。

 本広監督と君塚良一さんによく言われましたね。「お前は何者なんだ。何がしたいんだ。したいことをやればいいじゃないか。言い訳して、時代のせいにするんじゃない」と。それをそのまま、中村倫也くんに伝えました。

 ただ、彼はよい解釈をしてくれてきっかけにしてくれたけど、いまの時代・或いは倫也くんの一個下の世代に同じことを言っても、全く響かない言葉になってしまったとも思います。僕自身、ここ数年で「下の世代にはもう届かない」と知り、言い方・応援の仕方を変えていかないとと考えるようになりました。

 僕らはよく「ケツを叩かれた」という言い方をしますが、そんな言葉すら存在しないような感覚です。そういったなかで、どう背中を押していくか。僕たちも色々な人の背中を見て真似てやってきて、うまくいったこともあるけど、下の世代が僕らを真似していくことは少ないと思うんです。僕たちの世代は、上の人たちから教わったり真似しているパーセンテージが大きいけど、今はもっと新しいものを生み出す価値が高まっている。

 僕らができることは、それを知ったうえで下の世代から教わることだったり、せめてもの格好つけで僕らより上の世代がまだやっていないことに挑戦し、その成功/失敗体験を集めて、小さくてもいいから“前例”を渡すこと。それを下の世代の人たちに見てもらい、真似するか消去法のひとつとして使ってもらえたら、面白いものができる確率が0.00001%上がるかもしれない。そうなったらうれしいし、「前例を作るために格好つける」は自分で自分に課しています。

2022.06.23(木)
文=SYO
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=池田真希
スタイリスト=森川雅代