演者って、常に変化している方が楽なんですよ
――菅田さんほど「洋服で遊んでいる」俳優さんはあまり見ないかもしれません。
これは僕の持論ですけど、演者って、常に変化している方が楽なんですよ。例えば殺人犯の役ばかりやっていると「犯人役が似合う人」になるじゃないですか。それも一つの道ですが、同じようにさっき話した上下デニムばっかり着続けていると、それ以外の洋服を見たときに違和感が生まれてしまうんですよね。
なので、色々な役をやりたいと思っている場合は、常に色々なものを見せていくことによって違和感をなくしていけるというメリットも、役者にとってはあると思うんです。
――だから着る洋服も固定しないということなんですね。
新品の洋服ばかり着ていると新品以外が似合わなくなってしまう。それって役者としては損なことで、大河ドラマくらい時代が遠かったらいいけど、基本的に僕らの衣装は“生活感を出す”という意味でも古着なことが多いんです。なので、それがなじまないと画の中にものすごく違和感が出るんですよ。
そういう意味でも、僕は色々な洋服を着て、色々な姿を見せることができた方がいいんじゃないかと思います。
――菅田さんは古着屋さんにもよく買い物に行かれていますが「これ、めっちゃ欲しい!」と感情が沸き立つのはどんなものが多いですか?
やっぱり“リアリティ”ですね。単純に「数が少ない」という点と、「誰かが着ていた」という事実。
例えば、「バブアー」というブランドのブルゾンが欲しいと思ったとき、「自分のサイズに合うバブアー」というファクターもあるけど、「トム・ヨークがあの時着ていた形」となると、またそこに違うファクターが乗っかってくるんですよ。そういう自分の好きな要素が入ってくると着る、着ないに関わらず欲しくなりますね。
2022.05.06(金)
文=根津香菜子
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=AZUMA(M-rep by MONDO-artist)
スタイリスト=猪塚慶太