今、あえてラブストーリーに出演した理由とは?
「東京ラブストーリー」や「最高の離婚」、「カルテット」など、多くの名作連続ドラマを手がけてきた脚本家の坂元裕二さん。
彼が2020年の東京を舞台に、どこにでもいる大学生カップルの5年間におよぶラブストーリーを書き下ろしたのが、現在公開中の映画『花束みたいな恋をした』。
好きな映画や音楽が嘘みたいに一緒で、あっという間に恋に落ちた麦と絹が、同棲し、お気に入りのパン屋を見つけ、猫を飼い、花を買う……。
平凡だけどまばゆい、恋するふたりの日々がみずみずしく紡がれる。
主演を務めたのは、ほぼ同じ時期にデビューをし、関西出身という共通点もある菅田将暉さんと有村架純さん。特に菅田さんは、ボクサーから総理大臣まで振り幅の大きい役を多く演じてきた個性派。
そんな菅田さんが、今、あえてラブストーリーに出演した理由とは? 憧れるシチュエーションから理想のカップル像まで、人気者の恋愛観に迫った。
恋愛で心がくすぐられる感覚は、他でなかなか得られないと思う
――菅田将暉さんがここまでストレートなラブストーリーに挑戦することは、ある意味意外でした。
坂元裕二さんが描く物語がまず、純粋に好きだったんです。それと、これまで真っ直ぐなラブストーリーを全然やってきていなかったので、やっておきたいなーって(笑)。
役者業って年齢によってできる役とできない役があるんです。20代後半になった今しかできない物語はなんだろうって考えた時に、やっぱり淡くてみずみずしいラブストーリーだと思ったんです。
もちろん30代、40代になってもできるのかもしれないですけど、またちょっと違ってくるじゃないですか。恋愛の質が。
20代だと背負うものが多くはないから衝動的な感情だけで動くことができて、恋愛をしながら社会とも向き合っていくことになる。
『花束みたいな恋をした』はもちろん、過去に出演した『糸』も、そういう理由で出演を決めました。
――20代の独身同士の恋愛は、純粋に相手と向き合えると?
今はコロナ禍で人とのふれあいが少なくなっているから、よりみんなが実感していると思うんですけど、やっぱり奥深いんですよね。恋愛って。
もともとは知らない人同士がいろんなことを話して、いろんなことを知って、時には嘘があったり裏切りがあったり、勝手に想像したもので苦しんだり。なんていうのかな。この、心がくすぐられる感じっていうのは、なかなか他では得られない感情だと思いますし。
特にこの物語は、くっつく、くっつかないといった恋愛の結末ではなくて、過程を描く魅力がある。ふたりのやりとりの面白みみたいなことを表現できればいいなと思いました。
そういう恋愛や時代のあるあるを描くことに関しては、坂元裕二さんは天才ですから。なんでこんなにいろんなことを知っているんだろうって驚かされるんです。想定以上の作品ができたんじゃないかと思っています。
――ラブストーリーをこれまであまりやってこなかったのには、理由が?
単にタイミングの問題ですよね。この作品みたいな、自分の好きなラブストーリーと縁がなかっただけだと思います。
――菅田さんが普段、ラブストーリーを観ることは?
あります。でも、一観客として観る場合はハードな作品が多いんです(笑)。
ただ、ラブストーリーって、医療ものや刑事ものよりも実は身近な題材だと思っていて。そこに理想を重ねやすいし、過去の出来事を追体験できる。
だからこそ、僕はもちろん、多くの方がラブストーリーを求めるんだと思います。
2021.01.30(土)
文=松山 梢
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=古久保英人
スタイリスト=猪塚慶太