好きな人とずっと一緒にいる方法がわかったら、ノーベル賞もんです

――麦はイラストレーターになる夢を諦めて就職をしたことで、夢に向かって突き進む絹とのすれ違いが生じます。もし菅田さんのラジオ番組に、麦から相談メールが来たら?

 なんでしょうね。「ここにメールしてくる暇があったら彼女に連絡しろ!」ですかね。

 ムカつくかもしれないし、喧嘩になるかもしれないけど、彼女と一緒にいる時間をより作るべきですよね。話したくないことも1回話してみるべき。どんなすれ違いも、結局は全部コミュニケーション不足で起こるような気がするから。

 ラジオにメールしている場合じゃないですよ。

――では、絹から相談メールが来たら?

 僕は絹ちゃんを演じていないから彼女の気持ちはよくわからないけど、「信じて待っていてあげてほしい」と答えるかなあ。

 映画を観ると、絹ちゃんを突き放してるのは麦のほうなんですけど。自分の理想と現実の間で苦しみながら、それでもなんとか絹ちゃんと一緒にいるために頑張ろうとしているはず。

 男ってどこか「働かなきゃ」、「食べさせなきゃ」っていう責任と勝手なプライドがあるんです。

 女の人からしたら「そんなのいらないよ」って言う人も多いと思うし、「そういうことじゃないんだよ」って思うかもしれないけど。

 でも、将来家庭を持ちたいと思った時に、きっとそこの自信がほしいんです。古い考えかもしれないけど、好きな人には自分が何かしてあげたいんでしょうね。

――信じて待っていれば、麦は変わったのでしょうか?

 どうかなぁ。ただ、もう少し早くに一緒に泣けていたらよかったような気がします。

 どちらかが取り乱したとしても、最後まで諦めずに向き合えていたらすれ違いも起こらなかった。

 でも、あのふたりの恋愛はあのままでいい気もします。一緒の時間を過ごせたことに価値があるのだと思うから。

――出会った頃は驚くほど気が合った麦と絹も、次第にすれ違いが生まれてしまうのが残酷であり、リアルでした。菅田さんが今思う、好きな人とずっと一緒にいるための秘訣は?

 僕が知りたいですよ(笑)。でもやっぱりバランスですよね。僕は好きな人とずっと一緒にいたいという気持ちよりも、自分を好きでいてもらい続けることのほうが大事な気がします。

 だって、嫌じゃないですか。「一緒にいたい! 一緒にいたい!」って言ってばかりの男。

 それは一方通行のものだから、お互いがそう思えるようにならないとね。で、結局どうすればいいんだろう……。発見したらノーベル賞もんですよ。

――では、その答えを見つけたいと思いますか?

 そうですね。やっぱり“家庭を持って添い遂げる”ということは、自分の両親を見ていていいなって思うから。

 今は結婚して離婚しようが別に珍しくないし、そもそも結婚すら必要ないという考え方の人もいるじゃないですか。ずっとシングルでいいって思っている人もいっぱいいる。

 選択肢がたくさんある中でも、僕個人としては、家庭を持つことに対する憧れはあります。

菅田将暉(すだ・まさき)

1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2009年に「仮面ライダーW」でデビュー。その後は映画『共喰い』、『そこのみにて光輝く』、『ディストラクション・ベイビーズ』、『セトウツミ』、『溺れるナイフ』、『あゝ、荒野』、『アルキメデスの大戦』、『糸』など話題作に多数出演。ラジオ『菅田将暉のオールナイトニッポン』のパーソナリティーを務めるほか、2017年に歌手としてデビューをするなど幅広く活躍している。今後は映画『キネマの神様』(4月16日公開)、『キャラクター』(6月公開)が公開待機中。

映画『花束みたいな恋をした』

東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は、音楽や映画、小説やお笑いなどの好みが驚くほど同じで、あっという間に意気投合。付き合うことになったふたりは、大学を卒業後、フリーターをしながら同棲を始める。就職をし、仕事に忙殺されるようになった麦は、好きなことを仕事にしたいと語る絹とのすれ違いが増えていく……。

監督:土井裕泰
脚本:坂元裕二
出演:菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫
全国公開中
https://hana-koi.jp

2021.01.30(土)
文=松山 梢
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=古久保英人
スタイリスト=猪塚慶太