花吹雪と船出のシーンがありありと! 「槇原敬之」
続いて槇原敬之さん。実は数年前までは、マッキーといえば「冬」、ウィンター・ボイスの代表格に入れていた。しかし、年を取るごとに似合う色がイエベからブルべに変わるように、声の印象も変わるもの。あくまでも私の中でだが、ここ最近は春声ゾーンに入っている。
「HAPPY DANCE」は、花吹雪という歌詞と一緒に降ってくる切ないハートブレイク感がたまらない! 昔、カセットのA面にこればっかり繰り返して入れるほど好きだった。今聴いても胸をぞうきんのように絞ってくる。イタタタ!
マッキーの声の浸透力が凄まじく、聴くこちらの感情を乗せて体中を循環する。センチメンタル度の攻撃力は、鼻をくすぐる花粉の如し。小さな隙を見つけて流れこんでくるので、じっとした体勢で聴いていられない。毎回、スピーカーを倒したりクッションを投げたりしてしまい、部屋が荒れる。
2021年10月に発表された復帰第一作「宜候」は、春の出発にぴったりの曲だ。宜候=ヨウソロは、「真っ直ぐ進め」を意味する船舶用語。
ラストの「ヨーソロー ヨーソロー……」という繰り返しに、春の船出が見える!
2022.04.02(土)
文=田中 稲