福岡県糸島市に移住して10年になる料理家の広沢京子さん。移住してから、その時その時の旬の食材に出会うようになり、つくる料理も変わってきたといいます。

 そんな広沢さんに糸島の食材との関わりを伺うとともに、糸島の味わいが感じられる広沢さんおすすめレシピ&食材を教えてもらいました。


地元の素材を合わせるだけで美味しいひと皿に

 糸島に移住して、広沢さんのつくる料理も変わってきた。

「まず、メニューありきで食材を調達するのではなく、素材ありきでメニューを考えるようになりました。“直売所のパトロール”で見つけたものや、生産者の方から送っていただいたものが中心です。糸島って、本当に食材が豊かなので、地元産のものでたいていの料理はつくれるんですよ」

糸島の旬を追いかける歓び

 今回、つくってくれた2つの料理も、素材のほとんどが糸島産。“柑橘のタルティーヌ”は、豊富な柑橘類から、果肉がやわらかく甘い「天草」と、ぷりっと弾けるような食感の「はるみ」を使用。

 OKUZOE SEIPANのカントリーサワーに、TAKのチーズ、ハーブは広沢さん宅の庭から。糸島半島沖・姫島産のタコを使った“タコとひじきのパスタ”も、パスタとオリーブ油、こしょう以外は糸島産。塩は新三郎商店、醤油はミツル醤油といった地元産の調味料が、素材の持ち味をグッと引き立てている。

「同じ素材でも時期によって香りや食感が違うこと、同じ畑でも場所によって形や味わいが変わってくることが、身をもって分かるようになりました。旬を追いかけながら、料理を考え、こうしてお伝えすることにやりがいを感じています。私の料理の原動力は『これ、美味しいから食べて欲しい!』なんです」

2022.03.23(水)
Text=Yuki Ito
Photographs=Atsushi Hashimoto
Food coordinate & Styling=Kyoko Hirosawa

CREA 2022年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

あたらしい暮らし 楽しい暮らし

CREA 2022年春号

あたらしい暮らし 楽しい暮らし

特別定価880円

「CREA」2022年春号の特集は、「あたらしい暮らし 楽しい暮らし」。激動する時代の中“楽しい暮らしの正解”はなくて、きっとそれは百人百様。でも人生100年時代となり、キャリアがマルチステージ化していくと言われる世界を、自分らしく楽しむためには、自分の中に「種」を持っていたい。今すぐじゃなくても、ちょっと先の未来に芽が出るような、小さくても、強い種を――。