東京を離れ、ひとりで地方に住む選択をした4人の移住物語。「とりあえず動いてみる」という軽やかさで居を構え、旅するように土地の魅力に触れ豊かな日々を過ごしている。

 自然の恵みや、人との出会い……そして一日の始まり、満員電車とは無縁の幸せな朝時間についても聞いてみた。


甲府にいるから出合えた魅力的な人、食、自然

武井 えみり 29歳

東京→甲府(山梨)

【仕事】東京の企業に勤務(リモート中心)
【住居】東京と甲府の二拠点
    東京:シェアハウス 個室 月額12,000円
    甲府:アパート(1DK) 月額38,000円、秋よりシェアハウス 相部屋 月額45,000円
【移住の手段】約2年間甲府に通い人脈を作った

 今年2月から山梨県の甲府と東京の二拠点生活を始めた武井えみりさん。仕事は営業とマーケティングだが、コロナ禍によってリモートワークが中心となり、東京オフィスへの出社は週1日程度に。それを機会に、メインの拠点を甲府へと移した。

「初めて甲府がいいなと思ったのは、2019年に参加したイベントのとき。地域活性にも力を入れている甲府の老舗『五味醤油』の五味 仁さんらと知り合い、甲府の町や人の魅力に目覚めました」と武井さん。

 その後、甲府でイベントがあれば積極的に参加。もともとお店巡りが大好きな武井さんにとって、カフェやワインバー、イタリアンなど、レベルの高い飲食店に多く出合える甲府は、何度訪れても楽しく、町歩きも堪能。通うたびに新たな人との出会いがあり、好きな店は増え、興味は広がるばかり。

「多いときは毎週のように東京から甲府に通うことも。昨年10月に甲府を旅したとき、軽いノリで賃貸の内見予約をしたのですが、実際に移住するかどうかは決心がつかず迷っていました」

 甲府に移住し、非日常が日常になると今のような楽しさが薄れるかもしれない。都心に住む便利さを失うことへの恐れ、生活の不安……。そういったモヤモヤをふっきるきっかけとなったのは東京の不動産屋からの連絡だ。

 住んでいたマンションの更新が2021年2月と聞き、甲府で本格的に内見を始める。しかし、なかなか希望に合う物件が見つからない。そんななか、愛宕山の中腹でリノベ中だった古民家改装シェアハウス「結」のボランティア募集を見て連絡。建築事務所「SHOEI」の大原勝一さんと出会う。

「甲府移住を考えていることを相談したところ、賃貸マンションの空きを紹介して下さって内見しました。でもすぐには決められず、まだ移住に不安もあり、考えすぎて少し不眠気味に……」

 そこで移住すると良いこと・心配なことをノートに書き出して可視化。心配なことはあくまで短期的なもので、良いことは自分の将来に好影響をもたらしそうだと気づき、やっと腹が決まった。マンションの更新はせず、週1出社用に東京で友人が営むシェアハウスと契約。基本的には甲府で生活し、日曜は東京で買い物したり、友人に会ったりして、月曜に会社へ出社する。

「最近は東京にいると、早く甲府に帰りたくなります(笑)」

 秋には開業準備中の「結」に引越し、より自然豊かな場所で生活する予定だ。

2021.10.02(土)
Photographs=Wataru Sato

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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