人生100年時代、キャリアがマルチステージ化していくと言われる世界を自分らしく楽しむために、自分の中に、小さくても、強い「種」を持っていたい。今すぐじゃなくてもちょっと先の未来に芽が出るような種を——。

 様々なステージで活躍する人たちに一歩を踏み出すとき背中を押してくれること、大切にしている「種」について聞きました。


つくり手がすぐ傍らにいる、いつもの暮らし

 なんて広い空なんだろう。

 糸島市に移住して10年になる広沢京子さんは、ことあるごとに空を見上げ、深呼吸する。

「糸島に来て本当に良かったと思うのは、空がどこまでも広く、海が間近にあることです。仕事で煮詰まっているときも、落ち込んだときも、ふと顔を上げれば開放感いっぱいの風景が広がっていて、スーッと心が落ち着いてきます」

 とはいえ移住当初は、そんな余裕はなかったと振り返る。

 東京の代官山に住み、フードスタイリスト・料理家として多忙な日々を過ごしていた広沢さんが、結婚を機に、福岡市に拠点を移したのは2009年のこと。3年後の2012年に、建築士の夫が設計した糸島市の家に移り住んだ。

「当時子どもは3歳で、わんぱく。初めてのことに戸惑うことも多く、頼れる親や兄弟は遠く……1年目は、ほぼ記憶がないです(笑)。やっと生活のペースがつかめてきたのは、3年目くらい。生産者と消費者を繋ぐという、仕事の方向性も見えてきたころです」

ちょっと煮詰まったら海へ

 糸島半島の玄海国定公園内にある、5部屋だけの小さなゲストハウスのティールームは、最高の癒やしスポット。

「手つかずの浜辺の風景と海を間近に感じる窓際の席が好き。一人の時間をゆっくり楽しんでいます」

bbb haus スリービー ハウス

所在地 福岡県糸島市志摩小金丸1897
電話番号 092-327-8020 
営業時間 ティールーム11:00~16:00(L.O)、パントリー11:00~18:00
定休日 月・火・水曜
https://bbbhaus.com/

2022.03.22(火)
Text=Yuki Ito
Photographs=Atsushi Hashimoto
Food coordinate & Styling=Kyoko Hirosawa

CREA 2022年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

あたらしい暮らし 楽しい暮らし

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「CREA」2022年春号の特集は、「あたらしい暮らし 楽しい暮らし」。激動する時代の中“楽しい暮らしの正解”はなくて、きっとそれは百人百様。でも人生100年時代となり、キャリアがマルチステージ化していくと言われる世界を、自分らしく楽しむためには、自分の中に「種」を持っていたい。今すぐじゃなくても、ちょっと先の未来に芽が出るような、小さくても、強い種を――。