生産者と共にこの地で生きる

 海と山に囲まれた糸島は、何しろ食材が豊富。漁協や農協の直売所には、その日の朝に揚がったばかりの魚介類、採れたてのみずみずしい野菜や果物が並ぶ。

「東京にいるころから、生産者とは積極的に関わりたいタイプでしたが、糸島では車ですぐの距離に生産者がいて、直接会って話を聞ける。淡々とした仕事の裏にある膨大な努力や工夫、たくましさを目の当たりにし、その美味しさを伝えたいという思いを新たにしました。

 お付き合いを重ねていくうちに、生産者を『支える』というお客さん的な考えではなく、『共に生きる』という感覚をもてるようになったことが嬉しいです」

 2019年には、“時期時季”なものを“直々”にお届けしたいと、食のレーベル「jikijiki」を本格的にスタート。

 翌2020年には、福岡市内にアトリエ「kichi」を構え、生産者から預かった野菜や果物を使った料理教室なども開催している。

「とっつきにくい野菜も、レシピに落とし込むことで身近に感じてもらえる。限られた人数でも、熱量をもって伝えれば、その人から次の人に伝わっていくんじゃないかなと思っています」

ある日のTime Schedule

●6:00 起床。朝食、洗濯など朝のルーティン
●7:30 子どもを学校へ送り出し朝ドラを見る
(料理教室の日は子どもより早く家を出てアトリエへ)
●9:00 仕事開始。食材の買い出し、試作、原稿書きなど
●14:00 昼休み。
海辺のカフェに行ったり、その足で買い物も
●16:00 帰宅し、夕食などのルーティン。たまに長風呂
(料理教室の日は22:00ごろ帰宅)
●23:00 就寝

広沢京子(ひろさわ・きょうこ)さん
料理家

1975年生まれ、千葉県出身。大阪あべの辻調理師専門学校卒業後、飲食店勤務、フードスタイリストのアシスタントを経て独立。生産者との繫がりを大切に料理家として幅広く活躍中。

あたらしい暮らし
楽しい暮らし

2022.03.22(火)
Text=Yuki Ito
Photographs=Atsushi Hashimoto
Food coordinate & Styling=Kyoko Hirosawa

CREA 2022年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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特別定価880円

「CREA」2022年春号の特集は、「あたらしい暮らし 楽しい暮らし」。激動する時代の中“楽しい暮らしの正解”はなくて、きっとそれは百人百様。でも人生100年時代となり、キャリアがマルチステージ化していくと言われる世界を、自分らしく楽しむためには、自分の中に「種」を持っていたい。今すぐじゃなくても、ちょっと先の未来に芽が出るような、小さくても、強い種を――。