それぞれにドラマあり、勝ち残りロングセラーたち
b 45年間、世界中で支持されてきたロングセラーが8月にパワーアップ。肌に深いうるおいとバリアを与える乳液。ドラマティカリー ディファレント モイスチャライジング ローション プラス 120g ¥6825/クリニーク ラボラトリーズ
c 新しいキャピトン形成を遅らせるメカニズムに着目。肌のハリや弾力を高め、美しいボディラインへ導く。トータル リフトマンスール EX 200g ¥7350/クラランス
今、スキンケア界にちょっと面白い現象が起こっている。新製品よりも、むしろロングセラーものに勢いがあるという……。長い間、“新製品しか売れない時代”が続き、これは揺るがぬ法則なのかと思っていたが、今あらためて“売れている”のは、戦うロングセラーたち。
もちろん、“スキコン”とか“モイスチャーリポソーム”は、すでにロングセラーとして殿堂入りし、正直黙っていても売れてしまうが、今回クローズアップしたいのは、荒波にもまれ、ある意味苦悩しながらもリニューアルを重ねてサバイバルを勝ち抜いたロングセラー。あるいはまた、基本ケアの一員として役割をこなしてきた孤高のロングセラー。それぞれにドラマがある、諦めずに勝ち残ったロングセラーなのだ。
まず今回、4回目のリニューアルを果たした美容液、エスティ ローダーのナイトリペア。言わずと知れた“美容液の先駆け”で、細胞ケアとしても先駆け、美容成分の濃縮液というつくりと“美肌は夜つくられる”という理論の新しさで一世を風靡。“キレイになる夢のコスメ”として大ヒットしたが、逆にこの製品に追随する形で、スキンケア界はたちまち美容液ブームに。正直言って、存在が埋もれるほど市場が混沌としたが、やっぱりパイオニアは強かった。新旧交替の激しい激戦区で、リニューアルするたびに最先端に躍り出て、決して立ち止まらないのだ。今度の新作も、夜のうちに細胞にたまるゴミを掃除してクリーンにするという、説得力ある細胞の最先端ケア。存在感を見せつけた。ちなみにエスティは10年前に開発したダブルウェアのファンデやピュアカラーの婚活リップなど、ロングセラーをあらためて大ヒットさせていて、“老舗強し”を思い知らせている。
一方、効かなければすぐ飽きてしまう難関アイテム、スリミングものを諦めることなく7度も進化させ、効かせる意地を見せてくれているのが、今やスリミングのNo.1ブランド、クラランスのリフトマンスール。結果が露骨に目に見えるだけに、リスキーなアイテムをここまで真摯に進化させ続けるのはあっぱれ。これがまた今むしろ支持が増えている。
もうひとつ、クリニークの“黄色い乳液”、ドラマティカリー ディファレント モイスチャライジング ローション プラスが、デビューから45年にして初めてのリニューアルに踏み切った。言うまでもなく、クリニーク不動の3ステップの一角として、まったくブレず、自らの役割を黙々と果たしてきたが、初のリニューアルであることは45年前のフォーミングがいかにすごいものであったかの証し。しかもルーツは、元雑誌編集者だった創業者が取材をした皮膚科で、実際治療に使われていた黄色い乳液。その結果、世界一売れている乳液であり続け、今日も4.87秒に1本売れている。信念を曲げないクリニークはホントすごい。ちなみに今回のリニューアルは、50年前との環境の変化に対応したもの。こういうロングセラーがあらためて勢力を増しているのは、結局これ以上に信じられるものはないってみんなが気づいたから。新しいものは古くなるが、普遍的なものはいつまでも新しい……そういう勝ち残りロングセラーの時代が今やってきている。
齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数
Column
齋藤 薫 “風の時代”の美容学
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。
2013.08.24(土)
text:Kaoru Saito
photographs:Yasuo Yoshizawa