奇跡的な大ヒットとなった香りがそのままスキンケアに?

世界に先駆けて日本から発売に。ローション後にオイルでうるおいを整え、肌状態や好みによってクリームまたはエマルジョンで仕上げる3ステップ。

a クロエ クレーム ドゥ ラ ローズ ローズクリーム 50ml ¥14700

b クロエといえばこの香りの記憶がよみがえる人も多いはず。フローラルノートを基調にピオニーやフリージアをブレンド。クロエ オードパルファム 50ml¥10500

c クロエ クレーム ドゥ ラ ローズ ローズエマルジョン 50ml ¥12600

d 同オイル30ml ¥15750

e 同ローション 200ml ¥6300/コティ・プレステージ・ジャパン(4/17発売)
 

 結果として日本における“最大のヒット”となったのが、クロエの香り。“10年に一作、出るか出ないかの香り”とも言われ、香水がなかなか売れない日本でのすさまじい売れ方から“奇跡の香り”との異名もとった。ともかく香水界では“特別な存在”となっていた。

 だから誰もが納得したのが、今春“スキンケアライン”がデビューすること。香りが先にあってスキンケアをあとから作る……今の時代、きわめて希。ちょっと違和感を感じた人もいるかもしれない。でもかつてのクチュールブランドはみなこのスタイル。シャネルやディオールなどは、まずフレグランスがあってそこから化粧品に入っていった。加えて香水商から化粧品に入っていったゲランのようなブランドもある。

 ただ“クロエのスキンケア”は、またそれとも違う。ちょっと特殊なスキンケア参入となった。

 というのも、クロエは大成功した香りをそのまま生かしつつスキンケアを開発したのだ。フレグランスのラインからボディラインが生まれていくのはこの世界の常識だが、フェイスケアでは全く異例のこと。

 少なくともこの発想、10年前ならありえなかった。以前は“香料”そのものが肌に刺激をもたらすという啓蒙がひとり歩きし“無香料こそ正しい”という考え方が主流だったから。でもその後、自然派コスメのブームが押し寄せ、アロマテラピーの考え方がスキンケアと組み合わさり、一転自然界の香りが肌への効果と考えられるようになる。スキンケアにも香りが一気に戻ってきたのだ。

 でもこれはいわゆるナチュラルコスメではない。あくまでフレグランス生まれ。それでもクロエの香りは見事にスキンケアとマッチし、何よりクロエの香りの軸となっているローズの恵みが、肌にも直接働きかけるという、本当の意味で香り高き美肌効果をもったのだ。今までにないカテゴリーが生まれたと言っていい。

 しかも一度使えばわかるはず。スキンケアとしても“最先端モノ”と遜色ない内容。ローズローションは“進化したバラ水”と考えていいが、次に使うオイル美容液は、ハッキリ言って今までなかったもの。エッセンシャルオイルとテクノロジー系の美容液を足して2で割ったような独特なアイテムで、保湿効果がすばらしく一度使うと必ずハマる。肌がつるんと柔らかくなり、内から輝くローズ肌ができあがるから。そして3ステップ目に、エマルジョンかクリームのどちらかを選び、ひどく乾いている場合は2品づかい。肌の上でとろけるテクスチャーは、ともかくうっとりさせられる。もちろんローズをベースとした香りは、お手入れを至福の時間にするはずだ。

 あらためて気づいたのは、クロエの香りにはもともとスキンケア効果があったかのよう。ローズの香りなのに、柔らかく甘すぎず石けん系の香りと言われるように、爽やかなのに薄っぺらくない……クロエの香り好きはこのスキンケアにも必ずハマる。絶対に試してみなくては。今までこういう幸福感は初めて、そう思うはず。そして仕上がりはほんのりバラ色のベルベットスキンになるあたりも今までのスキンケアにはなかった手応え。クロエでなければ味わえない胸酔と美しさが今、始まる。

齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数

Column

齋藤 薫 “風の時代”の美容学

美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。

2013.04.14(日)

CREA 2013年5月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

春だから。気持ちいい読書

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