自分の中にあるもの以上は、出すことができない

――ご自身が考える、俳優としての武器は?

 私自身であることですかね。昔は役を演じるときに別人になろうとしていたんです。でもやっぱり、自分の中にあるもの以上のことを出そうとしても無理ですから。色々経験しながら悩んだ結果、結局私の外見で、私の経験値で演じるわけだから、自分の延長線上で考えればいいんだという結論に至りました。

 例えば殺人犯を演じるときは、「おばあちゃん家で過ごした私が成長して、人を殺める人生になっていたらどうなんだろう?」と想像したり、「大学に進学していたらこういう人生を歩んでいたかもしれない」、「違う職業を選んでいたらこんな生活だったのかも」とか。

 まったく別の人になるのではなく、違う世界線の私を想像してみるというやり方に変えました。大きく見せようとしても所詮、演じるのは私ですしね。

――注目度が高まり多忙な日々だと思いますが、素の桜井ユキさんに戻れる瞬間は?

 最近自転車を買ったんです。友達が電動自転車を持っていて「乗り心地がすごくいいよ」と言っていたので、自転車屋さんに行って試しに乗せてもらったら、「何コレ、どこまででも行けるじゃん!」と思って。

 休みの日に家でゆっくり過ごした後、夕方くらいに自転車に乗って家の周りをふら〜っと走るのがすごく好きです。

 歩いているスピードと車のスピードの中間がちょうどいいんですよね。小さな発見を見逃すわけでもなく、いいペースで景色が流れていく感じが心地いい。自転車に乗っている時間は本当にリラックスできています。

――何を考えていますか?

 比較的何も考えずにいられます。よく「料理をしているときは無心になれる」という方もいますけど、私の場合はすごく色んなことを考えてしまうんです。餃子を包みながら仕事のことを考えたり、全然無になれなくて。

 でも自転車に乗っているときだけは、過ぎていく景色を見ながら「わー、気持ちいいな! 幸せー!」っていう充実感が基本的に脳内にあるので、仕事のことを考えずに済むんです。

 近所から出ることはまだできていないので、仕事が落ち着いたらいつか遠出したいな。

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桜井ユキ(さくらい・ゆき)

1987年2月10日生まれ。福岡県出身。最近の出演作にドラマ「イチケイのカラス」、「真犯人フラグ」、映画『コンフィデンスマンJP』、『マチネの終わりに』など。NHKよるドラ「だから私は推しました」で第46回放送文化基金賞演技賞受賞。

桜井ユキ ファースト写真集『Lis blanc』(リス・ブロン)


2021年12月22日(水)発売
撮影 ND CHOW
定価 2,970円(税込)
SDP
http://www.stardustpictures.co.jp/book/2021/lisblanc.html
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2022.01.05(水)
文=松山 梢
撮影=杉山拓也
ヘアメイク=石川奈緒記
スタイリスト=李靖華