「美は細部に宿る」という格言があるが、天海祐希さんの場合は、全身からそれを放っているようだった。

 凛とした立ち姿、意志を持って伝えられる言葉たち。彼女の発する輝きの源には、パワーがあふれている。

 一方で、「プレッシャーだの、しんどいだのって、当たり前」と仕事についてはきっぱりと、キャリアに裏打ちされた覚悟とプライドが顔を覗かせた。

 仕事に全力を注ぎながら、日々の生活も心地よく過ごす。

 すべてをきっちりこなしているが、四角四面に生きているわけではないと、天海さんは笑う。ときには、「夜中のラーメン、おいしくない? 食べちゃう!」と奔放に、屈託なく話す彼女に、ときめきを感じずにはいられない。

 2021年も大活躍だった天海さんに、内側からみなぎるバイタリティの秘訣、作品に臨む上での信条、さらにはナレーションに挑戦した現在公開中の映画『私は白鳥』のエピソードまで、幅広くうかがった。


「私完璧、最高!」と思ったら、お仕事に失礼

――天海さんは、どの作品にも全力で向き合っている印象があります。常に前向きに臨める秘訣は何でしょうか?

 私たちがいつも直面するのは、自分の力量です。やっているときは当然100パーセント、一生懸命のつもりでやっていますけど、終わって、ちょっと期間をあけて観たときに「ああ、ここはもっとこうすればよかったな」と思うことが必ずあるんです。そう思うことは、そのときよりも成長しているからだと、私は受け止めているんですね。

 悔しい思いがなくなって、慢心というか「私完璧、最高!」と思ったら、このお仕事に失礼な気がしているので。「次はもっと、あんな悔しい思いをしないようにやろう!」となるから、そうした悔しい思いが続くから、お仕事を続けているんだと思います。

――難なく進める道、険しい道のふたつがある場合、険しい道のほうを選びますか?

 絶対にそうですね。上手くできたか・できないか、じゃない。そこに果敢に挑戦したことが、自分のプラスになると思いますから。自分に声をかけていただいたお仕事は、きっと「天海祐希ならこういう風にしてくれる」という気持ちがあるから、声をかけてくださるわけじゃないですか。そうしたら、たとえ完璧にこなせなかったとしても、最低限そこに100パーセントで向かったことが、自分にとっては大事なんです。

 これだけ才能のある方たちがたくさんいる中で、私に声をかけていただけるって、そんなにありがたいことはないですよね。期待に応えたいですし、責任の重さはあって当然だと思っています。だから、プレッシャーだの、しんどいだのって、当たり前じゃん、って(笑)。

2021.12.17(金)
文=赤山恭子
撮影=鈴木七絵
ヘアメイク=林 智子
スタイリスト=東 知代子(ポストファウンデーション)