外を歩くとイルミネーションで街がきらびやかに彩られ、クリスマスの雰囲気をしみじみと感じられる時期になってきました。ですが今年のクリスマスはゆっくりおうちで過ごしたいという方も多いはず。

 そんなみなさんに、クリスマスだからこそ読むべき心温まる絵本をご紹介。日本最大級の絵本サイト『絵本ナビ』で編集長を務める磯崎園子さんに、大人の心をほっこりさせてくれる、とっておきの絵本を5冊教えていただきました。


クリスマス・イブ、あなたの本当に大事な“願い”はなんですか?

『テオのふしぎなクリスマス』(文:キャサリン・ランデル/絵:エミリー・サットン/訳:越智典子 出版社:ゴブリン書房)

 クリスマス・イブの夜。テオのお父さんとお母さんは、いつものように仕事で家にいません。ベビーシッターは、テオをほったらかしてすっかり居眠り。ひとりぼっちのテオは目を瞑り、ギュッと両手を握って“だれか、いっしょにいてください!”と流れ星に願いを込めます。すると、古ぼけたクリスマスツリーの飾りたちが突然音を立てて動き出して……。

 テオとクリスマスツリーの飾りたちの一夜限りの冒険のはじまりです。

「身のまわりで起きる出来事全てを大事にしたくなるような気持ちにしてくれる絵本です。物語が終盤に近づくにつれて、テオの本当の願いや、大切にしたいことは何だったのかということをテオ自身が気づきはじめます。同時にお父さんとお母さんも、テオの本当の喜びとはなにかということが、少しのきっかけで気がつくのです。

 そんな描写が繊細に描かれているのが印象的ですね。毎年クリスマスの時期が近づくと読み返すのですが、そのたびに小さな気づきを得られます。切実な願いというのは、ちょっとした奇跡とか出来事の積み重ねでだんだんと叶っていくものだということが、この絵本を通して大人のみなさんにも届くのではないでしょうか」(磯崎さん、以下同)

あなたにとって特別なクリスマスは、きっと他の誰かにとっても…

『クリスマスのあかり』(文:レンカ・ロジノフスカー/絵:出久根育/訳:木村有子 出版社:福音館書店)

 チェコのクリスマス・イブに、小さな男の子がひとりで教会へ向かいます。その男の子の名前はフランタ。イエス様の生まれ故郷ベツレヘムから届いた灯りを、家のランプのろうそくに分けてもらうため教会へ向かいますが、教会で思わぬ失敗をし、あわてて逃げだすことに。しかし、あることが原因で困り果てているおじいさんに出会います。

 心優しきフランタは、おじいさんを助けるため、知恵と勇気をふりしぼってあちこちへ走り回るのでした。

「クリスマスという日が自分にとって特別な日であるからこそ、誰かにとっても特別な日であってほしいと思えてくれる絵本です。

 クリスマスになると、漠然と楽しい1日になったらいいな、と多くの人は思うはずです。でも、困っているおじいさんのために一生懸命行動する小さな主人公の姿を見ているうちに、自分も誰かのことを幸せにしたくなるという気持ちになってくる。そんな風にこの絵本が繋げてくれるんです」

2021.12.19(日)
文・取材=海老エリカ(A4studio)