人にはサイクルがある
安藤 CREA世代は、結婚や出産ということも考える時期かと思いますが、最近、専業主婦志向が増えているというような特集もありますね。
ちきりん あんなことを、仕事も結婚もしたことのない大学生にアンケートしても何の意味もないです。就活も仕事も大変そうだけど、誰かが養ってくれるならいいかな、みたいなイメージで、よく考えずに回答してるだけかと(笑)。
安藤 嫌な仕事ではなくて、好きなことを選んでやりたいという意味の「選業主婦」ですよね。
ちきりん 子育てのために一定期間、専業主婦になったとしても、子どもが精神的に親を必要とする期間なんてせいぜい15年です。子育てを終えてからの30年で、ゼロからキャリアを積むことも十分可能だし、今後はそういう人もどんどん出てくるんじゃないかな。
安藤 ちきりんさんは、今までのキャリアでの大きな転換点はいつでしたか?
ちきりん まさにCREA世代の35歳くらいで、大きく生き方を変えました。転職にしろ留学にしろ、それまでは常に“上”を目指す働き方をしていたのですが、そのとき初めて、自ら進んで、仕事をダウングレードしました。何年か、極端な働き方をしてみると、本当に人生の8~9割をこの仕事にかけていいのかと考えさせられます。その結果、上を目指すことをやめようと思えて、キャリアチェンジをしたんです。
安藤 そして、そのお仕事も40代半ばでやめられて、第二の人生に移られたわけですね。
ちきりん もともと最初から60代まで会社員でいる気はなかったので、いつかやめようと思い、部下が育つタイミングを待っていました。
今は本を書くにしろ、対談するにせよ、自分が心から面白いと思える、趣味的な仕事だけをしています。働かない人間は価値がない、苦労しないと仕事じゃない……みたいな“常識”へのアンチテーゼでもあるかな。
安藤 悠々自適ですね(笑)。
ちきりん それぞれの人には自分に適したサイクルがあると思うんです。一生ひとつのことをやっていたいという職人みたいな人もいるけど、私は6年から7年おきに、やりたいことが変わるタイプです。今までずっと、その間隔で会社や仕事を変えてきてるし。
安藤 あ、そういえば、私も6年です! 面白いですね!! 18歳で大学に入りましたが、ほとんど海外でのバックパッカー生活や留学をしながら6年で卒業し、その次が会社員生活の6年、それで、今に至っていますね。
ちきりん だから安藤さんも6年後には何をしているか分かりませんよ(笑)。
安藤 そう、私は、次は漠然と海外に行きたいと思っています。
ちきりん 「ひとつの仕事を飽きずに面白いと思える期間」って人によって違っていて、それは、案外、変わらないものなんです。その期間が10年とか20年だという人もいるし、もっと早くて2年で飽きてしまう人もいる。自分に適したサイクルを見極めると、何回、人生を転換できるかが分かるので、人生計画が立てやすくなりますよ。
安藤 これまでの自分史を書いたりしてワークしてみるとそのサイクルが見えてくるかもしれませんね。
ちきりん 今回、『未来の働き方を考えよう』では、職業人生を二回に区切って40代半ばでオリジナル人生に移行する提案をしていますが、本当は自分のサイクルに応じて、何回、生き直してもいいんです。その中には、専業主婦(夫)の期間とか、働かない期間があってもいいし。この後も何回か、異なるタイプの人生が生きられると思うとワクワクするでしょう?
安藤 本当ですね! 私の場合、6年サイクルだとすると、これから4つ(5つ?)以上の人生ですね? まだまだ、これからも、忙しいですね(笑)。
ちきりん
関西出身。証券会社での勤務後、米国での大学院留学を経て外資系企業に転職。2010年に退職してからは“楽しい仕事だけして暮らす”ふたつめの生き方を実践中。ブログ「Chikirinの日記」は月200万PVのアクセスを誇る。著書に『未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる』(小社刊)、『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社刊)など。
安藤美冬
株式会社スプリー代表。1980年生まれ。多種多様な仕事を手がける独自のノマドワーク&ライフスタイル実践者。『自分をつくる学校』学長、NOTTVの「テレビをほめるYESTV」レギュラーMC、『DRESS』の女の内閣 働き方担当相を務め、商品企画、講演など幅広く活動中。TBS系列「情熱大陸」などメディア出演多数。著書に『冒険に出よう』(ディスカバー・トゥエンティワン刊)がある。
未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる
IT化、グローバル化、人生の長期化などで激変する社会を生き抜くコツとして、「人生を二回生きる」働き方を提案する話題書。アラサー女子必読!
ちきりん・著 ¥1418(文藝春秋)
2013.07.08(月)
photograph:Miki Fukano