人気イラストレーター/アーティストの松尾たいこさんが、CREA WEBでの連載「松尾たいこの三拠点ミニマルライフ」でも紹介した「洋服を買わないチャレンジ」体験について、エッセイ本『クローゼットがはちきれそうなのに着る服がない! そんな私が、1年間洋服を買わないチャレンジをしてわかったこと』(扶桑社刊)を出版。買わない体験で“ファッション断食”するために大事なこと、気づいたこと、これからチャレンジする人へのアドバイスなどを、特別にレクチャーしてくれました!

» 第2回 チャレンジ中に気づくこと、工夫
» 第3回 終わりどき、その後に訪れる変化

「1年間洋服を買わない」
という言葉にどう反応する?

イラストレーター/アーティストの松尾たいこさん。ファッションやグッズにも造詣が深く、2017年11月に体験エッセイ『クローゼットがはちきれそうなのに着る服がない! そんな私が、1年間洋服を買わないチャレンジをしてわかったこと』(扶桑社刊)を出版。

 1年間洋服を買わない。そう聞いて「絶対にムリ!」と即座に拒否しつつも、心のどこかがモヤモヤッと反応してしまう……。そんな人はきっと、洋服がパンパンに詰まったクローゼットを前に「着る服がない」と日々悩んでいたり、あるいは、買い物となると自制心の働かない自分にほとほと嫌気がさしたりしているのでは? 実は、“ファッション断食”をする以前の松尾たいこさんも、その一人だった。

「以前の私は洋服を見るのが趣味で、少しでも時間が空けば買い物をしていました。例えば、六本木ヒルズで打ち合わせがあって、約束の時間まで15分もあればZARAでパパッと買い物。ショッピングバッグ片手に打ち合わせに行くことも、よくありました」

部屋の断捨離は成功しても
服は毎回リバウンド

コートやワンピースなど長さのある服は玄関収納へ。チャレンジ後のいまはスペースに余裕が。

「そんなふうだから、仕事が忙しくなると買い物へ行く時間を捻出できなくて、ストレスが溜まるんですよ(笑)。そのストレス発散が、夜中のネットショッピング。これが本当に多くて、洋服の買い物の半分以上を占めていたかも。でも、ネットで購入するときって、自分にいいように脳内変換しちゃうから、届いてみると思ったほどよくないか、着られてもまぁまぁなものばかり。それがわかっていても買い物はやめられず、実店舗とネットを合わせると、平均して3日に1回くらいのペースで何かしら買っていたと思います」

 当然ながら、クローゼットにはいつでも洋服がギュウギュウに詰め込まれていた。

「私は断捨離が好きで、家の中に不要なものを置いておきたくないタイプ。だから、洋服も1、2カ月に1回は見直しをして、遊びにきた友達に持って帰ってもらったり、姪っ子に送ったりしていたんですよ。ただ、処分した以上に買っちゃうから、収納が追いつかなくて、クローゼットは常にパンパン。着ようと思って引っ張り出すとシワシワで、アイロンがけは大嫌いだから、面倒でそのまま戻しちゃう(笑)。だから、死蔵している服の出番は、永遠に巡ってこなかったですね」

 ファッション関係も含め、断捨離や片付け本は何十冊と読破してきたという松尾さん。部屋の断捨離はうまくいったものの、服だけは何度片付けてもリバウンドしてしまっていた。

「洋服をどうにかしたいと常々思っていたから、友人で編集者の女性のフェイスブックで、『1年間洋服を買わないチャレンジがあと3カ月で終わる』という投稿を見たときに、即反応しました。好奇心旺盛なのが私の取り柄なので、間髪いれず『それって、なに?』と問いかけると、取り組むための3つのルールを教えてくれました。

 でも、絶対自分にできるとは思えなかった(笑)。だから、素直に『私には、1年間は無理だと思う』ってコメントしたら、その返事が『100日でいいからやってみて。それだけでも変わるから』だったんですね。100日さえもやり抜く自信は持てなかったけど、おしゃれな彼女がそういうなら何かあるんだろうなと思って、やってみる気になったのが私のチャレンジの始まりです」

2018.01.13(土)
文=今富夕起
撮影=平松市聖