下積みなんてしても何も積まれていかない

――現在、「中高年の星」と呼ばれているお二人ですが、自分の年齢を改めて意識することはありますか? 同世代の友人と比べて感じるギャップなど。

長谷川 僕がM-1に出てから、学生時代の友達から連絡がきたんですよ。それで、今年になって小学校時代の同級生と40年ぶりに会う機会があったんです。教頭先生になっていましたからね。僕ももうそういう年齢なんだなと実感しました。一緒に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観た友達が。ハンバーガー屋に行ったら二人してお金が無くて、「ハンバーガーを半分にしてください」って言って包丁で切ってもらい、1個のハンバーガーを分け合って食べたことだってあるんですよ。

渡辺 俺も同級生の子がもう20歳超えてるのはビビったもんな。

――では、芸人ではない人生を想像できますか?

渡辺 芸人していなかったら、雅紀さんは捕まってるよね。

長谷川 捕まっている可能性もありますね(笑)。でも僕もないものねだりなところはあります。同級生で結婚して家を建てて子ども2人いる友達がいるんですけど、幸せそうだなと思うんですよ。でもね、その友達は今の楽しみって子供の成長しかないって言うんです。自分のこと何もできないとか愚痴を言いながらも、毎年年賀状に子供の写真を載っけていて。それが楽しみなんだなと思うと、僕はそうはなれないけど、それもいい人生なのかなと思ったりしますね。その友達は僕のことを羨ましいって言うんですよ。だからみんな、ないものねだりですよね。

――著書の中では、鈍感なままだらだらと過ごしてしまっていたくすぶり期のことを、青春期と捉えていたのも印象的でした。売れなかった下積み時期があってこその、今なのかなと。

長谷川 はやく売れるにこしたことはないと思いますよ。あの頃があったから今があるというのはわかるし、たしかにそうだなと思うんですけど。でも、できれば苦労なんてしなくてもいいと思いますよ。

渡辺 下積みなんて関係ない気がするんですけどね。はやく売れてずっと残っている人もいますし。下積みってどんな経験だったかって言われても、僕ら答えられないんですよ。売れてないことが下積みなのか。別になにも積まれてないっちゃ積まれてないですからね。

長谷川 そこで何か得たというわけでも……。

渡辺 エピソードトークのネタは増えたかもしれないけど、絶対に売れている人のエピソードトークの方が華やかでおもしろいし。貧乏臭いもんね、俺たちの話(笑)。

長谷川 売れないと、僕の歯は全部無くなっちゃうので(笑)。

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錦鯉

ボケ担当・長谷川雅紀とツッコミ担当・渡辺隆からなるコンビ。2012年結成。「M-1グランプリ2020年」「M-1グランプリ2021年」2年連続ファイナリスト。

2021.12.17(金)
文=綿貫大介
写真=佐藤亘