M-1でブレイクしていなくても芸人は続けていた

――お二人がここまで続けてきたということの意味は大きいと思います。M-1は当初、「漫才師は10年やって売れなければ見込みないから辞めさせるきっかけを与えるためにキャリア10年で区切った」ということで結成10年までの制限もありましたよね。一般通念としても、芸人としての夢を追えるのは若いうちまで、という空気がどこかであったのかなと。そんな中で雅紀さんが「芸人を辞めるきっかけを逃した」と本で書かれていて、それもとてもリアルな言葉だなと感じました。

長谷川 M-1でいうと、2016年の時に(周囲から錦鯉は決勝に)いけるという期待はあったんですよ。自分でも決勝に行く気まんまんだった。まぁ結果いけなかったんですけど。そのあとに僕が自信があったのは2018年だったんですけど、準々決勝止まり。その時に僕が思ったのは、賞レースにいくらエントリーしても我々は厳しいのかなと。年齢的なものだとか、いろいろあるのかなと勝手に思い込んでいて。それからはコンテスト以外にも売れる道はあるのかなと模索はしていました。

 それでもM-1は出場し続けていて、2019年で準決勝まで行けて、敗者復活まで出られて。あれ、意外といけるなと。そしてついに2020年には決勝までいけた。やり続けてよかったなと思いますね。それにM-1で結果を出せなくても、芸人は続けていたと思います。

――どういうところが支持されたのだと感じますか?

渡辺 雅紀さんだと思いますね僕は。この人は本当に普段からこのまんまですからね。オンもオフもないですから。

――キャラクターとしてやられていると思われている人もいると思うんですけど、本当にずっとこのままなんですね。

渡辺 変わらないですね。バカだけど、優しいんですよ。

長谷川 ビジネスバカじゃないかと思われることもあるんですよ。後輩からも、ライブ後に僕に「あれ本気で言っていたんですか」と疑いをかけられたりするから。

渡辺 本当にバカすぎてね、嘘だろと思うんでしょうね。

――一方で最近では、隆さんの評価も業界内で高まっていますよね。バイきんぐの小峠さんもべた褒めされていますし。バイきんぐのネタを支えるブレーンとしての役割も果たしてらっしゃって。

渡辺 そう言ってもらえるのはありがたいですね。ただ錦鯉としては、僕はツッコミをしていないんですよ。注意しているだけなんです。だめだよ、とか、うるさいよ、とか(笑)。

――お互いがお互いのことをおもしろいと感じて、信頼し合えている関係性も素敵ですよね。年齢を重ねていくと、どうしても会話がなくなったり、相容れなくなってしまうコンビも出てきますが、お二人はそうなるイメージが沸かない。ずっと仲が良さそうです。

長谷川 そこまで仲が良いとも思っていないんですよ。じゃあ悪いかと言われるとそうでもない。だからそう映っているというのは不思議ですね。

渡辺 おぼんこぼん師匠こそ、お互い好きだったんじゃないかなと思いますね。だからあそこまで嫌いにもなれたのかなというのは思いますね。

長谷川 やっぱりかわいさ余って憎さ百倍。愛すれば愛するほど、信用すればするほど裏切られた時の振り幅がでかいというか。

渡辺 僕は雅紀さんのことを人間だと思っていないので、そこまでの気持ちは抱かないですね。それがいいのかもしれないです。

2021.12.17(金)
文=綿貫大介
写真=佐藤亘