「お芝居ってわからないですよ」
──だからなのか、これまでの2作も、ずっと前から何度も共演しているふたりに感じられました。それも、相手に合わせるふうではなく、より個性を際立たせながら噛み合っているのが面白かった。良き共演者であるためにこうありたいとか、考えることはありますか。
長澤 そんなこと考えたことありますか?
阿部 ないかな。
長澤 だからいいんじゃないのかなと思います。相手に気に入ってもらおうとするのが普通だと思うんですけど、阿部さんは一切ない。公演が終わったらすぐ帰っちゃうし(笑)。
阿部 今回は少し楽屋にいるようにします(笑)。ただ、長澤さんも人に対するそういうスタンスは同じだと思います。
──舞台という場所にはどんな魅力を感じておられますか。
阿部 舞台は稽古があるのがいいですよね。
長澤 納得しながら取り組めますよね。理解できなかった部分がわかったり、お互いの解釈が合致したりしながら前へ進んでいけるのが舞台の良さだなと思います。でも、わからないままやって「いいね」と言われるときもあるので、お芝居って難しいなと思いますけど。
阿部 わからなくてもやるのがいいですよね。野田さんもよく言ってます。あと、お芝居を始めた頃に僕、松尾スズキさんに「そこ『ツインピークス』でやって」と言われて、舞台用語か何かかなってわからないままやったら、松尾さんに「うん、いいよ」って言われました(笑)。だから、お芝居ってわからないですよ。
──そんな中で『THE BEE』に参加することは自分にとってどんな挑戦がありそうでしょう。
長澤 私は参加するだけで挑戦なんですけど、映像で拝見してもライブのようなスピード感や高揚感がある作品だなと思うので。阿部さんについていって、そういう空気感を出せたらなと思います。
阿部 野田さんが汗ボタボタ垂らしている姿だけでもライブ感がありましたよね。あれがカッコいいんです。でも、僕、汗をかかない体質なんですよ(笑)。
長澤 汗が出る装置を仕込んだらいいんじゃないですか。弾着みたいに。
阿部 セットに忍ばせておくとか。でも、自分で出さないとね。いや、出なくても気持ちはそれぐらい入れます。ね。やりましょうね。
長澤 はい。頑張ります!
阿部サダヲ(あべ・さだを)
1992年より「大人計画」に参加、同年に舞台「冬の皮」でデビュー。劇団の看板俳優として活躍するほか、ドラマや映画にも多数出演。主演映画『死刑にいたる病』が2022年公開予定。
長澤まさみ(ながさわ・まさみ)
2000年に映画『クロスファイア』でデビューし、以後映画、ドラマを中心に活躍。2011年に『クレイジーハニー』で初舞台。映画『マスカレード・ナイト』が現在公開中。
NODA・MAP番外公演『THE BEE』
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件に触発された、野田秀樹が、筒井康隆の小説『毟りあい』を題材に、ロンドンで現地演劇人とワークショップを積み重ね、書き下ろした英語戯曲『THE BEE』。これまでにロンドン、東京、NYなど10カ国14都市で上演、各地で称賛されてきた野田秀樹の代表作にして最大の衝撃作『THE BEE』が、2021年秋、新キャストを迎えて新たに生まれ変わる。
演出:野田秀樹
出演:阿部サダヲ 長澤まさみ 河内大和 川平慈英
公演スケジュール:
2021年11月1日(月)~12月12日(日) 東京芸術劇場シアターイースト ※10月24日(日)よりチケット一般発売
2021年12月16日(木)~12月26日(日) ナレッジシアター(グランフロント大阪北館4階) ※12月5日(日)よりチケット一般発売
https://www.nodamap.com/thebee/
2021.09.25(土)
文=大内弓子
撮影=深野未季
ヘアメイク=スズキミナコ
スタイリング=藤井希恵