NODA・MAP番外公演『THE BEE』で、阿部サダヲと長澤まさみが共演する。

 演じるのは、脱獄犯に妻と息子を人質に取られた男・井戸と、その逆襲で井戸が人質とする脱獄犯の妻。

 筒井康隆の短編小説『毟りあい』を原作として、野田秀樹が書いた傑作の9年ぶりの日本上演である。

 ここ最近共演機会が増えている阿部と長澤が、刺激的な劇空間を立ち上げてくれそうだ。


90分を疾走 ある意味「スポーツ」に近い舞台

──野田作品に初参加となる長澤さんから、まず出演が決まった感想を聞かせてください。

 長澤 NODA・MAPはいくつか拝見しているんですけど、役者さんがイキイキ演じている舞台上と、のめり込んで観ているお客さんとの一体感があって、この世界にいつか自分も入ってみたいと思っていたので嬉しいですし、頑張らなくちゃと思っています。

 特にこの作品は、出演するのが4人だけなので任されているパートをしっかり演じなきゃいけないでしょうし。私はほぼ出ずっぱりだから体力的にも大変そうだな、毎日ヘトヘトになって帰るのかなと思ってます(笑)。

 阿部さんのほうがもっと本当に出ずっぱりですけど。

 阿部 そう。僕もここまで出ずっぱりなのはやったことがないので不安になっています(笑)。でも、90分駆け抜けちゃえば終わるから、ある意味スポーツに近いのかな。だから楽しみでもありますね。

 野田さんの作品って、この『THE BEE』もそうですけど、重いテーマを描きながらも、役者の気持ちとしてはスカッと終われたりするんです。

 身体で表現したり、小道具を何かに見立てて使ったりすることで芝居ができていくので、それが上手くいって乗っていけると、役者同士で達成感みたいなものが味わえるというか。今回も、そこへいけたらいいですよね。

──阿部さんが演じられるのが、これまで野田さんが演じてこられた井戸役。以前、野田さんからいつかこの役をやってほしいと言われたことがあったそうですね。

 阿部 2012年上演時の松本公演を観に行ったときに、「サダヲ、こういうのやりたいだろ」と言われて、「はい。すごくカッコよかったです」って答えたんです。一番カッコいいと思ったのは、「剣の舞」の曲に合わせて踊っているところだったんですけど、踊りながら内側からすさまじいものが出てくる感じがあって、ちょっと興奮したんですよね。

 長澤 そのシーンは私も楽しみです。

 私、阿部さんが踊っているのがすごく好きなんです。舞台で初めて阿部さんを観た『天保十二年のシェイクスピア』で、息切れもしないで歌って踊っていたのがカッコよくて、その姿が忘れられないからかもしれないんですけど。

 最近共演させてもらった作品でも必ず踊っていて、それもとても魅力的だったんですよね。あと、狂気的な役も、自然にその空気をまとえて、阿部さんに演じられない役はないと思ってます。

2021.09.25(土)
文=大内弓子
撮影=深野未季
ヘアメイク=スズキミナコ
スタイリング=藤井希恵