濃すぎる家族たちが織りなすホームドラマ「俺の家の話」(TBS)、おもしろすぎじゃないですか!? 伝統芸能とプロレス、そして介護を軸にしながら、さらに世襲、学習障害、恋愛などさまざまな要素を絡ませている脚本の妙。そして長瀬演じる観山寿一が、重くのしかかってくる問題を次から次へと吹き飛ばしていくさまが見事なんです。
本作は俳優が決まった上で脚本を書く、いわゆる「当て書き」で作られているドラマ。まさに脚本家・宮藤官九郎から長瀬へ贈るはなむけともいえるでしょう。もうちょっとで最終回を迎えるなんて信じられない……。
数々の「○○ロス」という言葉が誕生したドラマ業界ですが、今回の長瀬ロスは過去最大級の喪失感かもしれません。そこで、この機会に俳優・長瀬智也のドラマヒストリーをお届けします。骨太さと繊細さで、いつもドラマに深みを与える長瀬の演技力を改めて感じて!
「俺の家の話」
毎話が傑作すぎて、最終回まで目が離せない!
過去作を振り返る前に、せっかくなので現在放送中の「俺の家の話」について。このドラマのおもしろみは先述の通り、脚本家・宮藤官九郎の手腕に尽きます。過去、数々の社会問題をうまくドラマに取り上げてきたクドカン。本作も「今」観て意識すべき内容が盛りだくさんです。
長瀬目線でいうと、俳優人生最後の作品としての意気込みをとても感じます。プロレスラーのブリザード寿(途中から覆面レスラーの「スーパー世阿弥マシン」へと変身)のプロレスシーンは、本人の希望で吹き替えなし。覆面なのに、プロレスシーンも自分で演じているというから驚きです。これ、ケガがあったら撮影に影響も出てくるので、本来考えられないことだと思います。しかし、撮影の1年前からしっかりレクチャーを受けて挑んでいる。それだけではなく、もちろん能の訓練も相当積んでいるはずです。プロレスと能、まったく違うジャンルのスキルを身に着けて撮影に挑んでいるんですよ。普通に観ちゃってますが、その裏には尋常ではない努力があるんですよね……。それを思うと、どのシーンも捨てどころがありません。まばたきすることすらもったいないと感じてしまいます。
昨年からずっと長髪を後ろで束ねていましたが、髪の毛もこのドラマのためにずっと伸ばしていたのかもしれません。ドラマの1話目では、ロン毛だったブリザード寿が、トレードマークのロン毛を家庭用のハサミで切り落とすシーンがありました。ジャニーズ俳優が自慢のロン毛をドラマの劇中で切り落したのは、「ラブジェネレーション」(97年・フジテレビ系)のキムタク以来。1話以降はずっとショートヘアなので、むしろ最初のロン毛はカツラでもよかったはず。リアリティにこだわり髪を伸ばし、NGが許されない断髪シーンを見事やり遂げる役者魂、すごいです。
そしてここのところ、豪華なゲスト出演も話題に。阿部サダヲ、佐藤隆太、矢沢心、ムロツヨシ、塚本高史……と、過去の長瀬×クドカンドラマの共演者たちの名前が続々と発表されています。長瀬最後の花道に、いろんな俳優たちが力を貸すその姿勢にこちらも胸が熱くなります。これには窪塚洋介、渡辺謙、加藤あい、笑福亭鶴瓶あたりの出演にも期待したいところです。朝ドラの最終回演出じゃないですけど、ラスト、できれば出演者が総出演をしているシーンを観たいですね。
その際はカーテンコールとして、テレビに向かって大きな拍手を贈りたい!
2021.03.19(金)
文=綿貫大介