「猫のことでマジで悩んでることがある」

――実際、念願だった猫との生活はいかがですか?

 距離感が本当にちょうどええっす。僕、昼寝する時、猫の近くにシングルの細~い布団をうまいこと敷いて、猫を見ながら寝るのが好きなんですよ。2匹の寝ている姿を見てると幸せそうで、うらやましくなるんですよね。

――ちなみに、これまで動物と暮らした経験は?

 小学生の頃、ハムスターを飼っていたことがあります。大事に可愛がってたんですけど、屋根裏に棲みついていた野生のイタチに深夜、襲われてしまったんです。まさかカゴの扉を開けられるとは思わず……。泣きながら学校に行きました。

 その経験がトラウマになって、ペットを飼うことにはずっと慎重になってしまって。「次に動物と暮らすなら、あの時と同じことは二度と起こしてはいけない。命は大事にせなあかん」と思うようになったんです。

 それでいうと、猫のことでマジで悩んでることがひとつあるんですよ。

――なんですか、それは。

 贅沢なキャットフードを毎日食べる生活と、健康的なキャットフードを毎日食べる生活、どっちがええんやろうなって。

――前者じゃないですか?

 そうなんでしょうけど、健康食を食べて長生きするほうが猫にとっての幸せなのか、少し命は短くなっても猫たちが食べたがるものを食べたほうが幸せなのか。

――鰻さんは、猫の幸福度が気になると。

 動物病院の先生に「6~7歳になると、何かしらの持病が出てくるかもしれません」って言われてから、どっちが猫たちにとって幸せなのか、わからなくなって。

 もう毎晩、猫の顔を見ながら、どっちがええんか、どっちが幸せなんか、ずーっと考え続けてるんです。

――鰻さんが長く一緒にいたいと思うのであれば、健康食のほうがいいのでは?

 もちろんそうです。けど、「長く一緒に」は僕のエゴじゃないですか。猫になってみないと、本当の気持ちはわからないと思うんです。

 やっぱりねぇ、贅沢なキャットフードやと、がっつき具合が全然違うんですよ。贅沢なやつだと「早くくれや!」って鳴くくらいテンションが上がってますし、逆に健康的なやつだと「今日もこれかぁ……」みたいな顔して食うてるんですよ。僕で例えるなら、そんなに好きじゃないきんぴらごぼうと大好きな天津飯を食べるスピードくらいの違いがあるんです。

 いろんな考え方があるのでどっちでもいいと思いますけど、僕自身、薄くて長い人生より濃くて短い人生のほうがええなぁと思っていることもあって。奥さんは健康志向なので、今のところ健康的なキャットフード多めなんですけどね。答えがなかなか出ないんです。

――「人間の思う幸せ」と「猫にとっての幸せ」、考えさせられますね。例えば、病気になってしまって、人間の手を施さなければ助からないとわかった時は、どんな決断をされますか?

 その場合はできる限り、なんとかしてあげたいです。やっぱり長生きはしてほしいですからね。

 じつは僕、2匹が2歳くらいの頃から、最期どうするかも考えてるんですよ。

2021.09.28(火)
文=高本亜紀
撮影=山元茂樹
写真=鰻和弘