役柄を理解するということは自分を知るということ

――『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18年)では主人公の愛人役である笛子を演じるなど、さまざまな役柄にも挑戦しています。今後こういう役を演じてみたいとかはありますか?

 実は、これをやりたいっていうのは特にないんですよね。それよりも、人は私にどんな役をやらせたいと思うんだろう、というところに興味があるんだと思います。

 自分が思う自分らしさというのは、それはそれで大切なものだと思うんですが、あくまで私の視点から見た“ひとつの自分”でしかないというか。きっと、それぞれ人によって、見えてる私って違うと思うんです。

 自分には見えない、人にしか見えない何かというのは、必ず存在していると思います。お芝居をしていると、そういう場所に気づくことができる。自分の知らなかった面が見えてくる。この役のこういうところは近いけど、こういうところは違うな、とか。

 役柄を理解しようとする時、自分との相対的な関係で紐解いていくようなところがあると思います。必然的に自分をより見つめなおすきっかけになる。それが純粋に面白いです。

 それは、歌の仕事でも同じで。人につくっていただいたものを歌うからこそ生まれる意外性や発見がいっぱいあって楽しいです。

 お芝居でも歌でも、作り手の創造力をかきたてる存在でありたいと思っています。自分が作ったものを自分自身で表現するということもできる中で、私という素材を使ったら自分の頭の中を超えた何かが生まれると感じてもらえたら嬉しいです。

――「みさき」という女性をひとりの女性として尊敬できる女性、こうありたいと思える姿が沢山詰まっていると話していましたが、三浦さん個人としては将来どうありたいと考えていますか。

 自分がこれまでこうだと考えてきたことと違う何かに直面したときに、ちゃんと相手の話を聞ける人でありたいです。自分が今持っている正しさみたいなものに、相手を当てはめたり、否定するような人にはなりたくない。いくつになっても、相手がいくつであっても、そういう柔軟さや学ぶ姿勢は忘れずにいたいと思っています。

 いろんな経験をして、いろんな人の話を聞いて、時にはぶれても良いと思う。たぶんそれは、たとえ人の影響を受けたとしても変わらない大切なものがあるって信じられているからだとも思うんですけど。

 いろいろやってみたらいいと思ってます。人として間違ったことさえしなければ。その結果、未来の自分が、今の自分が想像できないような人間になってたら面白いですね。

衣装クレジット

ベロア素材のシャツ 36,300円/ロク(エイチ ビューティ&ユース)、2タックパンツ/マメ クロゴウチ(https://www.mamekurogouchi.com/)、ショートブーツ 85,800円/アクネ ストゥディオズ(アクネ ストゥディオズ アオヤマ)、右耳につけたシルバーイヤーカフ 22,000円/ラッツェル アンド ウォルフ(ザ・ウォール ショールーム)、左耳につけたシルバーイヤーカフ 93,500円/ラッツェル アンド ウォルフ(アディッション アデライデ)、右耳につけたシルバーイヤーカフ 16,500円/フェノメナ コレクション(ザナドゥ 東京)、 シルバーチェーンネックレス 77,000円/ララガン(ララガンデザイン/info@ralagan.com)、パールのついたチェーンネックレス 107,800円/ソフィーブハイ(バーニーズ ニューヨーク )、シルバースネークチェーンネックレス 13,200円/カルペディエム(カルペディエム/https://carpediemjw.com/pages/contact)、シルバーチェーンブレスレット 52,800円/ジジ(アパルトモン 青山店)、シルバーリング 35,200円/アン バイ トモヨ ヨシダ(アン・デザインズ/info@un-designs.com)。

三浦透子

2002年、5歳の時に清涼飲料水「なっちゃん」のCMで2代目なっちゃんとしてデビュー。俳優として『月子』(17年)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18年)『あの日のオルガン』(19年)、『おらおらでひとりいぐも』(20年)などに出演。『天気の子』(19年)の主題歌を歌うなど近年は歌手としても活躍。待機策に『彼女が好きなものは』(21年秋公開)、『スパゲティコード・ラブ』(21年公開)がある。新曲「通過点」がテレビ東京で放送中のドラマ「うきわ―友達以上、不倫未満―」のエンディングテーマに決定している。

ドライブ・マイ・カー

舞台俳優であり、演出家の家福悠介。彼は、脚本家の妻・音と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻はある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう。2年後、演劇祭で演出を任されることになった家福は、愛車のサーブで広島へと向かう。そこで出会ったのは、寡黙な専属ドライバーみさきだった。喪失感を抱えたまま生きる家福は、みさきと過ごすなか、それまで目を背けていたあることに気づかされていく……。

監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介 大江崇允
原作:村上春樹「ドライブ・マイ​・カー」(短編小説集「女のいない男たち」所収/文春文庫刊)
出演:西島秀俊 三浦透子 霧島れいか/岡田将生
2021年8月20日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
https://dmc.bitters.co.jp/

2021.08.18(水)
写真=佐藤亘
文=CREA編集部