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うちの子ベストショット③
「俺様の靴の上で寝るのが大好き。一度だけ間違えて大久保くんを履いて仕事いきました」(川原さん)
――そして2年前に、夏ちゃんを亡くされたんですね。
急に苦しみだして……しこりがあって、手術しようとしていた矢先に亡くなってしまったんです。めっちゃ泣きました。なんなんですかねぇ? ザ・猫で触れ合うことがあんまりなかった分、なんにもしてあげられなかった、何かもっとしてあげたらよかったっていう思いがあったのかもしれないです。
ぽっちゃりしてたから、手術するならもう少し痩せないといけないって(病院の先生に)言われたから、食べるのがめちゃめちゃ好きだったのに、あんまり食べさせないようにしてたんです。そうしているうちに亡くなっちゃったので、好きなように食べさせておけばよかったっていう気持ちもあったのかもしれないです。舞台にも目を腫らして出てしまって。
――亡くなったその日に、舞台の出番があったんですか。
そうなんです。「(ほかの芸人に)どうしたん?」って言われましたけど、「ダイアンのユースケさんの真似です」って答えて。お客さんにも「なんかわからないんですけど、目が腫れてユースケさんみたいになってしまいました。まぶたが(客席まで)当たってたらすみません」って、ネタにしないといけないくらい、目を腫らしてしまいました。
で、葬儀みたいなのをやったんですけど、棺桶の中にあげられなかったお菓子をたくさん入れたんです。業者の人に「いっぱい入れずに、1~2個にしてください」って言われたから出そうとしたら、死んでるから動かないはずの夏ちゃんがお菓子の1つを歯と歯の間で噛んでたんです。それを見て、食いしん坊やなぁって思いましたね。
――その1年後に春くんも亡くされたんですよね。
春くんは、病院の先生に「もうダメですよ。けど、毎日、栄養をあげるんだったらもう少し保つかもしれない」って言われたんです。なので、お願いして、管を通して(延命治療して)1~2カ月後やったかなぁ? 朝、寝てんのかなって思うくらい、静かな表情でかちこちになってました。この時はやりきったというか。少しでも生きてほしいっていう僕の勝手な思いで、春くんには逆に大変な思いをさせて申し訳なかったなと思いましたね。
実は大久保くんも1~2年くらい前、腎臓の病気になってしまったんです。ステージ4で、もうダメかもしれないとも言われて。で、毎日2回、点滴しないといけなかったんですけど、病院に通うのはストレスになってしまうんで、点滴の打ち方を教えてくれる病院を探してやり方を覚えました。
――2匹を亡くして、さらに大久保くんの介護まで……大変でしたね。
ご飯も全然食べへんし、養成所の元同期だった友達に相談したら、「声に出して川原くんの思いを伝えたほうがいいよ」って言われたんです。で、家に帰って、大久保くんに「ご飯を食べてほしい。なぜなら、まだまだ一緒にいたいから。長生きしてほしい」って言ったら、嘘みたいに食べ始めたんですよ。病院の先生から「腎臓は一度悪くしたらよくはならない」と言われてたのに、みるみる元気になって、今はステージ2。先生も「ありえへん」ってびっくりするくらい元気になりました。
調子が悪い時は、嫌われてもしゃあないっていう気持ちで「ごめんね、ごめんね」って言いながら無理やりご飯を食べさせてたのに、今は僕が「ちょっと待ってくれ、さっき食うたやろ?」って言ってしまうくらい、食欲も旺盛。病院で定期的に検診してるんですけど、つい最近の数値がいちばんよかったです。
――すごい。思いってちゃんと通じるんですね。
猫だけじゃなく、動物を飼っている人は一度騙されたと思って「長生きしてほしい」って口に出して、ちゃんと伝えてみてほしいです。僕はそれからちゃんと口に出して、「ご飯をいっぱい食べてね」とか伝えるようになりました。
――川原さんにとって、大久保くんはどんな存在ですか?
第2の膝ですね。
――川原さんにとっても、大久保くんは膝の一部だと(笑)。
いない時は、俺の膝がどこかに行ったと思うくらい、体の一部ですね。
――これからも長生きしてほしいですね。
ね! 今でもだいぶ長生きしてくれてますけど。僕としては一度、死を覚悟したっていうこともあるし、これからもなるべく膝の上に乗せ続けていきたいなと思います。
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川原克己(かわはら・かつみ)
1980年1月21日生まれ。鹿児島県大崎町出身。2004年、瀬下豊とお笑いコンビ「天竺鼠」を結成。ボケ・ネタ作り担当。2009年ABCお笑い新人グランプリ最優秀新人賞受賞、2014年ABCお笑いグランプリ優勝など。2020年5月には「自宅から最も笑いをとれる芸人は誰なのか?」をテーマにABEMAで生配信された「家-1グランプリ2020 ~お笑い自宅芸No.1決定戦~」で優勝している。趣味は絵本集め、帽子集め、猫、野球。
YouTube:天竺鼠・川原チャンネル
Twitter:@kawaharakatumi
Column
お笑い芸人の“うちの子”紹介
今をときめくお笑い芸人たちが愛すべきペットとの生活を語ります。飼い始めたきっかけやその子のチャームポイント、可愛い! と思う瞬間や彼らとの暮らしのなかで気づいたことなど、たっぷり語ってもらいました。しゃべれども、しゃべれども、ペットへの愛は尽きないようです。
2021.08.20(金)
文=高本亜紀
撮影=深野未季
写真=川原克己