歴史のアイロニーを垣間見せてくれる興味深い展覧会

当時のビデオクリップなどもファッションと共に展示
image (C) The Metropolitan Museum of Art

 前半のパンクの歴史を回顧するパートでは、70年代のヴィヴィアン・ウエストウッドやマルコム・マクラーレンのウェアが展示されている。UKパンクは彼らがキングスロードに開いたショップから始まったとも言われる。UKパンクの代名詞的存在であるセックス・ピストルズはこのショップに集まる若者たちで結成されたバンドだった。またパティ・スミスやラモーンズなどのニューヨーク・パンクを生んだバワリーのナイトクラブCBGB(2006年に閉店)のトイレを復元。落書きまみれのワイルドな雰囲気が、パンクの全盛期を思い起こさせる。

安全ピンを使ったザンドラ・ローズのドレス
Courtesy of Zandra Rhodes
image (C) The Metropolitan Museum of Art

 パンクとモードの関係を検証するパートでは、有名デザイナーのウェアが数多く登場。ジャンニ・ヴェルサーチ、マルタン・マルジェラ、アン・ドゥムルメステール、川久保玲、フセイン・チャラヤン、ヘルムート・ラングなどの作品が並ぶ。

 アンチ・エスタブリッシュメントの精神に貫かれたアナーキーなサブカルチャーが消滅し、今度はそれが裕福な階層向けのハイエンドのファッションとして復活する。そうした歴史のアイロニーを垣間見せてくれるという点でも興味深い展覧会だ。

「パンク:カオスからクチュールへ」
開催期間 2013年5月9日(木)~8月14日(水)
開催場所 メトロポリタン美術館(ニューヨーク)
URL www.metmuseum.org/en/exhibitions/listings/2013/punk

鈴木布美子 (すずき ふみこ)
ジャーナリスト。80年代後半から映画批評、インタビューを数多く手掛ける。近年は主に現代アートや建築の分野で活動している。

Column

世界を旅するアート・インフォメーション

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2013.05.29(水)