「衣装合わせで、着ていくほどに『これ、山下さんじゃないか…?』と」(仲野さん)

――仲野さんが本作で演じた津乃田についてもお聞きしたいのですが、以前の取材で「ビジュアルに、山下敦弘監督のエッセンスを感じる」とおっしゃっていましたね。

仲野 話しましたね(笑)。衣装合わせのときに、部屋に向かう道中でたまたま山下さんとすれ違ったんですよ。「お疲れ様です!」とあいさつをして、そのまま本作の衣装合わせ部屋に向かったのですが、着ていけば着ていくほどに「これ、山下さんじゃないか……?」と思って……(笑)。

西川 「服、置いていったのか?」って……(笑)。

仲野 はい(笑)。さらに「キャップをかぶれる?」「ひげも生やせる?」「眼鏡も……」となって、いよいよ「どういうことだ!?」と思っていたら、西川さんから「山下さんみたいな感じで」という言葉が出たんですよ(笑)。

西川 私がファッションのモデルにしたんです(笑)。山下さんも「こんな感じだけど」と私服の写真をいくつか送ってくれて、参考にしました。

――ご本人のバックアップ体制があったのですね(笑)。ルックを山下監督に寄せていったのは、どういった理由からなのでしょう?

西川 そうですね、津乃田をちょっとコミカルな存在にしたかったんですよ(笑)。

仲野 大丈夫ですか? すごくマニアックな話になってきましたよ……(笑)。

――ぜひお聞きしたいです(笑)。

西川 (笑)。決して横暴なタイプのディレクターではなくてね、小心者みたいな雰囲気を醸し出してるんだけど実はやっぱり揺るぎない創作意欲があって、あと永遠の中学生みたいな年齢不詳の雰囲気で相手を油断させて、気がついたら被写体の懐に入ってしっかりカメラを回しているところ……(笑)。そういった山下さんのイメージを、津乃田というキャラクターに感じていたんです。津乃田は主人公の三上(役所広司)とは全く違うけれど、とにかく憎めない人たらしな部分がある。山下さんもそうなんです。

 あと、映像作品に出てくるディレクターって、同業者からすると「こんな人、いる……?」というキャラクターが多いんです。そうはしたくなかったので、具体的にイメージするために「山下さんだ」と思うと、筆が進んだんですよね(笑)。

仲野 そうだったんですね(笑)。

――山下監督は、本作にコメントも寄せていらっしゃいますね。

西川 そうなんです。「すごく良かった」とおっしゃってくれました。

2021.02.10(水)
文=SYO
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=石井 大(仲野)
ヘアメイク=酒井夢月(西川)、高橋将氣(仲野)