地元・名古屋では映画番組にレギュラーで出演するほか、自身の出演作を集めた映画祭が開催されるなど、自主的にミニシアターの支援活動も行っている俳優・田中俊介。新作映画『タイトル、拒絶』で流した涙の意味についても語る第2回。

●草彅剛と共演した『ミッドナイトスワン』

――今年公開された内田英治監督作『ミッドナイトスワン』での瑞貴役も印象的でした。草彅剛さんとの共演はいかがでしたか?

 草彅さんとは初めての共演でした。凪沙という役は草彅さんにとって、かなり挑戦的な役柄だったと思うんですが、現場での集中力はとてつもないものでした。

 スイッチのオン/オフをしっかり切り替えられる方で、控室でメイクしているときはとてもラフな状態でいられるんです。でも、現場では凪沙にしか見えない。そういったことが僕らを含めた周りに、いい影響を及ぼしていて、とても勉強になりました。男から見ても、カッコ良かったです。

――そして、最新出演映画『タイトル、拒絶』は内田監督がプロデュースを務められました。

 今回も内田さんから直接お話をいただきました。もとのお芝居があって、その脚本・演出でもあった山田佳奈さんが描かれた脚本がとにかく面白かったんです。いろんな苦悩を抱えた人たちがぶつかり合う群像劇の中で、僕が演じたリョウタは数少ない男性キャラのひとり。しかも、主演の伊藤沙莉ちゃんは大好きな役者さんですし!

●あのときの自分しか流せないクズ男の涙

――ヒロインの元カレを演じたドラマ「この恋あたためますか」に続き、今回もデリヘルの運転手・リョウタのクズ男さ加減がハンパないです。

 自分勝手なクズ男は、やりがいがあるんです(笑)。「恋あた」で演じたクズ男も、予想以上に反響があって、役者冥利につきました。今回も森田想ちゃん演じる彼女に、なかなかの酷い仕打ちをしてしまうんですが、気持ちが分からないわけでもない。

 自分の理想像を持ちながら、うまくいかないこともあって、言いたくないことを言ったり、したくないことをしてしまう。そのため、自分で演じながら、愛おしさも感じていました。

――本作ではどんな新しい田中さんが見られますか?

 僕の綺麗なお尻が見れます(笑)。あと、涙を流すシーンがあるんですが、自分でも意図しなかったタイミングで流れてきたんです。それはリョウタと当時の田中俊介でリンクするものがあったこと。そして、森田想ちゃんのお芝居に引っ張ってもらえたことが大きいと思うんです。

 今「あのシーンで、あの芝居で、あの泣き方をやってくれ」と言われてもできない気がするんです。そういう意味でも、リョウタはあのときの僕しかできなかった役かもしれません。

2020.12.04(金)
文=くれい響
撮影=山元茂樹
スタイリング=中川原有(CaNN)