古くて新しい 奥深い日本茶の世界へ

 「chagama」は明治10年創業の製茶問屋、マルモ商店の直営店。閑静な住宅街に個性豊かな店が点在する鷹匠エリアにある。創業140余年という老舗ながら、雰囲気はモダン、そして提案するのも新しいお茶の楽しみ方だ。

 棚に整然と並ぶのは、常時100種類以上のお茶。「あさつゆ」に「摩利支」、「標高1,000m」、「富士山二合目」「Z1」……。お茶の品種名を見ているだけでも、興味がそそられる。なかには、市場に出回っていない貴重なものも。

 気になるものがあったら、とにかく、飲んでみる。茶釜で沸かしたお湯で煎れてもらい、お茶の話を聞きながら試飲をするのも、優雅な時間だ。

 「市内の梅ヶ島で育ったやぶきた茶は、昔ながらの浅蒸しで、ぬるめのお湯で淹れても芳醇な香りが立ち上がり、甘みも感じます。一方、同じ梅ヶ島産でも、標高1,000メートルで育ったものは、野趣あふれる味わいが楽しめるんですよ」。尋ねるとスタッフがスラスラと答えてくれるから、次も次もと試したくなる。

 さらなる新体験は、フランス製エスプレッソマシンを置いたカフェコーナーで。一杯ずつ抽出する煎茶エスプレッソは、お茶本来の味がぎゅっと凝縮して、なんとも贅沢な味わい。散歩途中にふらっと立ち寄って、煎茶エスプレッソをテイクアウトする……、そんな現代版お茶スタイルが叶う環境がうらやましい。

chagama

所在地 静岡市葵区鷹匠2-10-7 パサージュ鷹匠 1F
電話番号 054-260-4775
営業時間 10:00~19:00
定休日 月曜(祝日は営業)
https://chagama.jp/

 同じく鷹匠エリアにある「CHA10」は、静岡産有機栽培の抹茶をいろいろな飲み方で味わえるスタンド。カウンター席をしつらえた店内は落ち着いていて、ひとりでも立ち寄りやすい。

 窒素の力で抹茶を泡状に抽出する「NITRO抹茶」は、ビターなお茶の風味と甜菜シロップの優しい甘みが混ざり合い、口当たりがなめらか。抹茶をシャンパングラスで飲むというのも斬新だ。

 抹茶ゼリーや抹茶アフォガードなどのスイーツは、卵や牛乳、白砂糖を使わないビーガン仕様。徹底的にオーガニックにこだわるのも、粉末状の茶葉そのものを溶く抹茶は、すべての成分が体内に運ばれるから。

 「お茶の成分を丸ごと摂ることができる抹茶は、免疫力や腸をきれいにする作用があるんです」と、ヘルスコーチングの資格を持ちマクロビに精通するオーナーの中野目則子さん。

 着物を着なくていい、作法も気にしなくていい抹茶ドリンクは、おいしいうえにヘルシーで、心も体も満たしてくれる。

CHA10

所在地 静岡市葵区鷹匠1-11-6
電話番号 054-204-2210
営業時間 9:00~17:00
定休日 火曜
https://cha10.net/

2020.11.19(木)
文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵