味の七変化を楽しむ、街なかのお茶カフェ

 お茶の消費量が日本一の静岡市。市街地には、お茶をさまざまなスタイルで楽しめるカフェが点在している。いわゆる「お茶風味」ではなく、本格茶葉を使っているのは、その多くが茶農家や茶商が密接に関わっているから。

 70余年の歴史を持つ製茶問屋・丸善製茶が運営する「MARUZEN Tea Roastery」は、焙煎温度が選べるお茶と、お茶ジェラートの専門店。

 茶葉の種類だけではなく焙煎温度まで選べるのは、かなりレア。といっても、「焙煎温度」という言葉にピンとこない人もいるかもしれない。茶の芽を摘んだ後、蒸し、揉み、乾燥させ、その後、茶商によって行われるのが、香ばしさと甘みを引き出す「火入れ(焙煎)」だ。簡単に言えば、低温度で煎れば煎茶、高温で煎ればほうじ茶となる。

 茶葉は短い時間で蒸した「浅蒸し」とその2~3倍の時間で蒸した「深蒸し」の2種類からチョイス。焙煎温度は、80℃・100℃・130℃・160℃・200℃の5段階。

 はたして、どれほどの違いがあるのか。「浅蒸し100℃」は馴染みのある爽やかなお茶の風味、「浅蒸し160℃」は優しいロースト感を感じ、「浅蒸し200℃」は香ばしくすっきり。

 さらに、同じ焙煎温度でも、「浅蒸し」か「深蒸し」かで味は変わる。「浅蒸し130℃」は煎茶らしい旨みが、「深蒸し130℃」は強い渋みやコクがあって、しっかりとした飲みごたえがあった。こんな七変化は今までにない新体験だ。

 使用しているのは、静岡県産の一番茶のみ。一杯ずつ、それぞれの茶葉に適した湯温で丁寧にハンドドリップする。雰囲気はカジュアルに見えても、お茶に向かう姿勢はとても真摯でまっすぐだ。

MARUZEN Tea Roastery

所在地 静岡市葵区呉服町2-2-5
電話番号 054-204-1737
営業時間 11:00~18:00
定休日 火曜
http://www.maruzentearoastery.com/

2020.11.19(木)
文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵