お土産にしたい、静岡茶のあれこれ
お茶の奥深さ、新しさに触れると、この世界をもっと知りたくなる。
静岡市は、全国の産地から荒茶(生葉を蒸して揉みながら乾燥させた状態のもの)が集まる「お茶界のハブ」でもあり、市内にある茶市場ではそれらのお茶が活発に取引される。
集まった荒茶を高い技術で商品に加工するのが、茶商。その数は、なんと市内に100軒以上! 彼ら茶商がいてこそ、私たちはおいしいお茶を飲むことができるわけだ。
訪ねたのは、茶商の「マルヒデ岩崎製茶」。ここでは、茶匠のもと、合組(ごうぐみ)を体験することができる。
合組とは、産地や品種の異なるお茶をブレンドし、味わいを整える伝統的な技法。茶葉それぞれの味や香りや色を見極め、極上のお茶に仕上げてゆく作業は匠の技、そしてブレンドの中身は秘伝のレシピだ。お茶はまだまだ化学では解明しきれていないからこそ、マニュアルよりも研ぎ澄まされた感性と経験が必要とされるのだろう。
まず、荒茶の色を見て、香りを嗅ぎ、触れ、味を見て……と、試行錯誤を重ねながら少しずつ茶葉を選んで混ぜてみる。もちろん、黄金律に沿ってブレンドするのもいいけれど、自分好みにブレンドすれば、世界にたったひとつのオリジナル茶の完成だ。
「お茶のブレンダーは、さまざまな奏者が奏でる音を調整し、融合し、音楽を完成させるオーケストラのマエストロのような存在」と、2代目の岩崎泰久さん。
茶畑のテロワールを楽しめるシングルオリジンもあれば、茶匠の感性と経験でつくりあげるブレンドありと、お茶の世界は思ったよりも深くて広い。
マルヒデ岩崎製茶
所在地 静岡市葵区北番町40-21
電話番号 054-271-1010
営業時間 9:00~17:00
定休日 水・日曜
https://ameblo.jp/mixcha/
お茶文化の魅力に開眼したこの旅で出会ったのが、「お茶染め」生地を鼻緒にした下駄。市内の下駄メーカーが、染職家の鷲巣恭一郎氏とコラボしてできた、唯一無二のアイテムだ。
「お茶染め」は、お茶を作る過程で出る商品にならない部分の茶葉をじっくりと煮出し、全て手作業で染めている。煮出した後の殻は、木屑やおからなど廃棄物と混ぜ堆肥へ加工、循環してゆく。環境にも配慮した技術だ。
サンダル感覚で気軽に履ける下駄は、高さがあるので歩きやすく、脚をきれいに見せる効果もあり。この下駄を履いてお茶カフェを巡ったら、気分も盛り上がりそう。
mizutori
所在地 静岡市葵区平和1-18-22(本社工房)
電話番号 054-271-6787
営業時間 8:00~17:00
定休日 土・日曜
https://www.geta.co.jp/
http://geta-shop.jp/
お茶スポット巡りの最後は、製茶問屋直営の「雅正庵」へ。抹茶を贅沢に使ったお菓子は、静岡らしいお土産になる。
名物は生クリーム大福の「鞠福」。とろけるように柔らかな餅の中に濃厚な抹茶クリームとあんこが包まれていて、上品なお味。さらにスペシャルな「生鞠福」は、手にすればしたたり落ちそうなほどに柔らかな餅と濃厚な抹茶の風味が癖になる、大人のスイーツだ。
雅正庵 千代田本店
所在地 静岡市葵区千代田7-1-47
電話番号 054-267-3008
営業時間 10:00~19:00
定休日 無休
http://www.oyaizu.co.jp/gashoan/
静岡市で出会った、お茶文化。奥深いけれど意外と気軽で、とりいれたくなる飲み方もたくさん。お茶の時間を大切にすれば、毎日はもっと豊かになるかもしれない。
お茶のまち静岡市
https://www.ochanomachi-shizuokashi.jp/
しずおか茶巡りデスク
https://www.ochanomachi-shizuokashi.jp/tourism/chameguridesk/
2020.11.19(木)
文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵