洞窟内で儀式を行うふたりの女性

 このクマヤ洞窟は外から見ると、うねるような珪岩地層がむき出しになった、ひとつの岩山です。

 築かれた階段をのぼりきると、岩盤の裂け目に巨岩がはさまった状態の入口へ。カラダをよじって岩の隙間を抜けると、巨大な空洞が目の前に突如、開けます。

 洞窟の天井の高さは約10メートル、広さは約600平方メートル。そんな巨大な洞窟の床一面に、白砂が敷き詰められているのです。不思議に思うのは、洞窟の入口が海抜25~30メートルと高い位置にあるのに、どうやって白砂が運ばれてきたのでしょう?

 入り口から差し込む光をたよりに奥へ目を凝らすと、鏡を祀った祠がありました。そして訪れたとき、ふたりの女性がその周囲のあちこちにロウソクを灯しています。

 ひんやりとした空気。洞窟内に響く波の音。立ち入ってはいけない、神聖な儀式の最中のようで、そそくさと退散しました。

 あとになって島のかたに尋ねると、洞窟内で見た女性たちは、おそらくユタ(沖縄の霊能者)だろう、と。正式にユタとなる前に訪ねなければならない聖なる場所のひとつが、クマヤ洞窟なのだそうです。

 ちなみに、江戸時代の学者・藤井貞幹が、「神武天皇は琉球の恵平屋島(今の伊平屋島)に生誕あそばされたり」と唱えたゆえんが、このクマヤ洞窟だったといいます。

 さらに「日本の発祥の地は沖縄だ」と自論を展開し、教科書でもおなじみの国学者の本居宣長とやりあったとか。

 ちなみに、伊平屋島は古来より“てるしの島”と呼ばれてきました。“てるし”とは太陽、あるいは太陽神を意味する琉球の古語。また、“てる”は“神歌テルクグチ(照り輝く神の言葉)”、“しの”は“神聖なるもの”という意味もあります。

 聖なる太陽神の島に伝わる、天照大神の神話。八百万の神が隠れている天照大神の気を引こうと舞い踊ったのは、ひょっとしてクマヤ海岸? そんな想像も膨らみます。

伊平屋島

●アクセス 那覇から車で運天港へ約3時間。フェリーに乗り換え約80分
●おすすめステイ先 松金ホテル
http://matugane.com/

取材協力 伊平屋島観光協会
http://www.iheyazima-kankou.jp/

古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

Column

古関千恵子の世界極楽ビーチ百景

一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!

2020.06.20(土)
文・撮影=古関千恵子