16世紀の天草に思いを寄せる とっておきのヴィラ
より隠れ家気分を味わうのなら、ヴィラA、Bがあるエリアよりさらに山を登ったところにあるヴィラCへ。
5組のゲスト専用のレセプションと個室レストランを完備しているから、滞在中、プライバシーが守られたエリアで過ごすことができる。
レセプションでチェックインを済ませ、エレベーターに乗り上階の扉が開くと、そこは木立の中。そんなヴィラまでのアプローチにも、ワクワクする。
インテリアに表現されているのは、ポルトガルの船が往来し、南蛮文化が花開いた頃の天草。
それらを、ラグジュアリー感を損なうことなくみごとに表現した部屋は、居心地がよく、たっぷりと天草を感じさせてくれる。
食事はヴィラの違いにかかわらず、すべてのゲストが、懐石料理を個室レストランで楽しむスタイル。
予約は不要、営業時間内の好きな時間に利用できるから、旅の自由度がディナーの予約時間に左右されることはない。
ゆったりとした気分で味わう料理は、天草の旬の食材を芸術品のように美しく盛り付けたもの。
陶磁器の島として知られる天草らしく、地元産の陶磁器も使われ、目も楽しませてくれる。
「明日はこの窯元を訪ねてみようかな」
食事をいただきながら、そんな旅のプランも思いつくかも。
ゲストの自由度を最優先するサービスは、食事にかぎったことではない。
先取りして世話を焼く旅館流のもてなしではなく、リクエストがあれば徹底的に答えるのがここのスタイル。リゾートでも、いわゆる温泉旅館でも味わったことのないホスピタリティが気持ちいい。
ヴィラCに泊まるのなら、サンセットタイムはぜひレストラン「天正」のテラスへ。木々の向こうに広がる東シナ海の夕景は感動的。
その昔、海が道だった頃、天草の人々は、海の向こうにある上海やマカオ、ポルトガルと通じていた。そんな頃を思いながら時を過ごすのが、このホテルの醍醐味だ。
キリスト教が伝来した当時の雰囲気や、島の豊かな自然を表現したインテリアに馴染むうち、気分は古今東西を超えてしまう「石山離宮 五足のくつ」。
不思議とくつろげる空間は、﨑津集落で見た、神社の鳥居と教会の尖塔が重なる風景にも似ている。
石山離宮 五足のくつ
所在地 熊本県天草市天草町下田北2237
電話番号 0969-45-3633
http://www.rikyu5.jp/
2020.05.06(水)
文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵