記憶に残る時間を過ごすゲストルーム

 マンダリン オリエンタル 香港のゲストルームは、全501室(うち71室がスイート)。オリエンタルテイストをたくみに取り入れたデザインの部屋には、それぞれに楽しみ方がある。ハーバールームは、ヴィクトリア・ハーバーと対岸の九龍半島を一望するロケーション。水上を行き交う船や九龍半島の街並みは、窓際だけでなく、ガラスの壁で仕切られたバスルームからも楽しむことができる。双眼鏡が用意されているというのも、マンダリンらしいユニークなサービスだ。

左:香港らしい景色を楽しむのなら、ハーバールームを。さまざまなタイプの枕を選べるピローメニューも用意 photograph:Pian Pang
右:部屋に用意された双眼鏡を使えば、対岸の九龍半島も一望

 その他、洗練された雰囲気のスーペリアルーム、独立したクロークルームや大きなウォークインクローゼットのあるオリエンタルスイート、スタイリッシュなデザインのプレミアルームなど、部屋のタイプは15種類。このホテルを愛した著名な写真家、パトリック・リッチフィールド卿を偲んで名付けられたスイートは、世界的に有名なデザイナー、ニッキー・ハスラム氏が内装を担当。三脚を模したランプやメタリックな材質のカーテンなど、こだわりのディテールが、写真スタジオの雰囲気をかもしだしている。

モノクロームに赤のアクセントが個性的なリッチフィールドスイート。ガラストップのコーヒーテーブルの下には、思い出の品々が飾られている
photographs:Pian Pang(左、右ともに)

 50年の歴史を誇る老舗であっても、各客室の設備は最先端のもの。インターネットケーブルやビデオオーディオ、iPodのケーブルも完備し、デスク上のIPフォンは、天候や飛行機の出到着データまで表示されるという多機能ぶりだ。ホテルからのメッセージも、テレビ画面で確認できるようになっている(日本語を選べるというのもうれしい)。

 旅をする私たちにとって大切なことは、いかに豪華な設備を体験したかではなく、どんな時間を過ごしたかということ。滞在中に出会った驚きや喜びが、次の旅へのきっかけとなるのだと思う。訪れるたびに、そのことを深く実感させてくれる、マンダリン オリエンタル 香港。チェックアウトするときは、またいつかここで過ごしたいと願って、ホテルを後にする。

左:1960年代のモノクロ写真。可愛らしいページボーイがゲストを迎えていた
右:コンシェルジュ・アンバサダーのGiovanni Valent氏。1979年から34年にも渡り、このホテルに勤務している
photographs:Pian Pang

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
トラベルライター。マカオをはじめとするアジア、中米を中心に取材。テーマは、ネイティブの暮らしやローカルフード、リゾート、ホテルなど。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビ、雑誌などで発信中。トラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(著・花津ハナヨ  文藝春秋)では、女流漫画家の花津ハナヨ氏と共にマカオを歩き、女性視点のユニークなマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。www.serizawa.cn

Column

芹澤和美の香港・マカオ 時の流れを超える旅

マカオをはじめとするアジア、中米を中心に取材するトラベルライターの芹澤和美さんが、昔の姿を残しながらも近年急速に発展する街・マカオ、そしてエキゾチックな香港の魅力を紹介します。

2012.12.26(水)