宮島の鳥居の後ろに
まさかの景色が
こうした店では、新作が入荷されるにしてもターゲットが外国人観光客に完全にシフトされているため、かなり大胆なデザインになってきます。
たとえば、伊豆は天城の「浄蓮の滝」。石川さゆりの名曲のご当地です。この滝を見上げられるエリアに土産屋があるのですが、その入口に掲げられていたTシャツは最高に素敵でした。
「滝」と一文字だけ考えられないくらい大きくプリントされ、その下部にローマ字で「JOREN FALLS」。
さらに強烈だったのが安芸の宮島。神社エリア以外は島全体が土産屋街みたいになっています。そこの一軒に、こんなデザインのTシャツがありました。
「厳島神社の鳥居の背景に富士山」
素晴らしくアバンギャルドです。シンプルにこれだけのアピールをやってのけるセンス、頭が下がります。
外国人相手だからといって「侍」「忍者」「一番」などのデフォルトTシャツだけで逃げない攻めの姿勢。断固支持です。
ただ、一つ気をつけるべき点があります。この手の店に、若い日本人が来ることはまずありません(私はアラフォーですが、この世界では完全に若手です)。そのため、それなりに若い人間が入店&購入すると、外国人と思われて英語で声をかけられるケースも少なくないです。日本語で返すと、
「あら、お上手ね」
「よく言われます」
みたいな。オバチャンたちとのそんな触れ合いもまた、観光地Tシャツ集めの楽しさの一つです。
春日太一
1977年東京生まれ。時代劇・映画史研究家。日本大学大学院博士後期課程修了。著書に『時代劇は死なず! 完全版』(河出文庫)『仁義なき日本沈没』『市川崑と「犬神家の一族」』(以上、新潮新書)『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』『仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版』『美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道』『泥沼スクリーン これまで観てきた映画のこと』(以上、文藝春秋)など多数。
春日太一
観光地Tシャツのすすめ
2019.09.28(土)
文・モデル=春日太一
撮影=佐藤 亘
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