
みなさん、この夏は観光地へ行きましたか?
Tシャツもたくさん着ましたか?
観光地Tシャツは買いましたか――?
観光地Tシャツってなんだ? と思われるかもしれません。簡単にいうと「観光地で売っているTシャツ」です。そのままです。
といっても、最近は街でも着て歩けるようなオシャレだったり可愛かったりするTシャツも売られるようになりました。が、ここで言うのはそんな甘っちょろいものではありません。
おちゃらけた外国人しか寄らないような土産屋にさがっているアレです。東京でいうと、雷門や東京タワーがプリントされているところにデカデカと「東京」と入ったTシャツ。パリでいうと、エッフェル塔に「PARIS」と入った――。その観光地を満天下にアピールするTシャツのことです。

観光客ならではの浮かれたテンションで勢いのまま買い、そして帰宅して冷静になって扱いに困る。たいていは、そんな感じでしょう。
その観光地Tシャツを実は私、コレクションしていまして。旅行やら出張やらで地方に行く度に買いまくり、気づけば100着くらい集まってしまいました。


なぜそんなものにハマったのかといいますと――そもそもは嫌がらせでした。
二十代半ばの頃のことです。大学の同級生が結婚することになりまして、何かプレゼントを渡さなければならなくなりました。でも当時、私はいろいろと心が荒んでいましてね。もらって困るものを渡そうと思ったんです。
で、思い立ったのが「外国人が喜びそうな観光地Tシャツを夫婦ペアで」でした。その頃は京都で時代劇の取材をしていたので、京都ならその手のがいくらでもあると思ったんです。
2019.09.27(金)
文・モデル=春日太一
撮影=佐藤 亘