なかなか見つからない
観光地Tシャツ

 ところが――。意外とないんですよ、ピンとくるヤツが。河原町や三年坂といった外国人がよく来る目ぼしい観光地を回ったのに、「これだ!」というようなのが見当たらない。

 こちらが想定していたのは、清水寺や金閣寺がプリントされているところに舞妓さんがいて、そこに「京都」と入ってるようなの。でも、そこまで冴えているのがなかなかない。みんな時代に迎合しているのか、中途半端にオシャレなんです。これでは嫌がらせにならない。

 で、諦めて京都駅に向かいました。でも、最後の望みはありまして。それが近鉄の名店街。八条にある新幹線の改札口の近くにある、お土産エリアです。当時、ここは時代に取り残された感があり、売られているTシャツのセンスも古い気がしたんです。

 で、探し探し求めて。でも、なかなか見つからない。最後に、いちばん奥にある薄暗い土産屋にたどりつきました。やる気のなさそうなオバチャンが一人でヒマそうにしている店でした。

 今でも覚えています。入口に、虎が大きくプリントされているTシャツと並んで、アレがあったんです。金閣寺に舞妓さん、そして「京都」のプリント。完璧でした。

「あった!」

 思わず叫んでいました。心の中でかなり巨大なガッツポーズをしていました。

 そして気づけば、三着、買っていました。二着は新婚夫婦に、もう一着は自分に――。
京都中を探し歩いているうちに、知らぬ間に「自分の思い描く、あの観光地Tシャツ」が愛しくてたまらなくなっていたのです。

 そのクセが抜けなくなり、観光地に行くと風光明媚よりも土産屋のTシャツに自然と目がいくようになってしまいました。