名所のイラストに地名がデカデカとプリントされた観光地Tシャツをコレクションしているわけですが。前回述べましたように、そういうのを売っている土産屋は、観光地の中でも結構ひっそりとたたずんでいます。さびしい限りです。
そんななか、大々的に観光地Tシャツを推してくれている聖地があります。それが熊本城です。
たいていは片隅の土産屋に置かれている観光地Tシャツですが、熊本城ではそんなことはありません。メインどころの店舗で売られている。しかも、それが一軒だけではない。
本丸脇の土産店――今は閉鎖中ですが、それから二の丸駐車場の土産店、そして城下の物産エリア「城彩苑」の土産店「旬彩館」「雅」、さらに県が運営する物産館――なんと、五軒もあるのです。
しかも、それぞれに売っているTシャツが違う。さらに、店舗によっては何年かおきに新入荷される。たまりません。
私は熊本城に毎年、年に数回行きます。城自体が大好きなのもありますが、実は最新Tシャツを求めてという目的もあったりするのです。
近年は「くまモン」なるモンスターが大人気のため、土産売り場もそのグッズがフィーチャーされていて、Tシャツもかなり侵食されてきました。それでも、私が求めるような観光地Tシャツもちゃんと売られています。
熊本は「火の国」と呼ばれるだけあり、Tシャツのデザインも質実剛健。特に好きなのは、私が「武者返しTシャツ」と呼んでいるやつで。
熊本城の石垣は敵を防ぐために独特の反りで積まれており、その形状を「武者返し」といいます。これがとにかく美しいのですが、特に美しいのは宇土櫓。高くそびえた石垣の反りっぷりは芸術といえます。
それが全面に大きくプリントされ、その脇に筆書きで「熊本城」。素晴らしい。
2019.09.29(日)
文・モデル=春日太一
撮影=佐藤 亘