観光地Tシャツをコレクションするようになり、旅の楽しみが加わりました。それは、Tシャツを買うことだけではありません。そこに行く前に、「この観光地ならこんなTシャツがあるかも――」と、妄想することです。

 たとえば阿蘇だったら、「外輪山のイラストが大きくプリントされた上に《ASO》とロゴが入っているのがあったらいいなあ――」とか。

 ただ、なかなかそうした理想形に出会えるわけではありません。それでも、妄想するだけでウキウキしてしまう。嫌がらせで始まったはずの観光地Tシャツ購入ですが、思えば随分と遠くにきたものです。

 さて、そうした中でずっと思い描いてきた憧れの観光地Tシャツがありました。それは、八甲田山。

 私は映画『八甲田山』を愛してやみません。冬になって東京で大雪になったりすると窓を開け、薄着になり、『八甲田山』のDVDを観賞するという――「セルフ4DX」を試みるくらい、どっぷりハマり続けています。

 それだけに、青森の八甲田は私にとっての聖地でした。

 そして、妄想し続けていました。八甲田の現地では、どんな観光地Tシャツを売っているのだろう、と。

2019.09.30(月)
文・モデル=春日太一
撮影=佐藤 亘