そうだ!
八甲田山に行こう
私が考えていたのは、映画の題字と同じような(そのままトレースしてくれていたら最高)骨太の筆文字で大きく「八甲田山」と書かれていて、八甲田の連峰がその下にプリントされている――というデザインです。これなら100点。
そして、ついに。その八甲田山に行く機会ができたのです。2018年9月のこと。気持ちがふさいでいたので、大きな景色がみたいと思い、「そうだ、八甲田山に行こう」ということになりました。
八甲田山の雄大な景色ももちろん楽しみだったのですが、それより何より、現地で売っているTシャツにひたすら想いを馳せていました。
そしてついに、聖地巡礼の当日。一日乗り放題で契約した観光タクシーに乗り、一路「八甲田ロープウェイ」へ。「田代」をはじめ映画に出てくる地名が標識に次々と現れる度、テンションが上がっていきました。
現地に着くまでに何軒かいい感じの土産屋があったので、片っ端から寄りました。が、どの店にも「八甲田山」手ぬぐいまではあっても、Tシャツはありませんでした。
いよいよ、八甲田山へ。まずはロープウェイの麓駅をチェック。それなりにグッズは充実していましたが、肝心のTシャツはなく。
で、ロープウェイに乗り込み、山頂駅へ。車窓から見える青森湾、そして対面にある岩木山。素晴らしく雄大な風景でした。が、気分はそれより何より山頂駅の土産屋へ。
そして駅を降り、土産屋を探し――その瞬間、「うおーっ!」と叫んでしまいましたよ。土産屋の入口にあったのです。Tシャツが。
しかもですよ!
思い描いていたズバリそのもの!
「骨太の筆文字で大きく『八甲田山』と書かれていて、八甲田の連峰がその上にプリントされている」Tシャツです。
天気は大快晴(現地情報では、八甲田山はあまり晴れることがないとのこと)、駅舎の外には最高の景色が広がっていたのですが、私は一目散に土産屋へ。そしてついにゲットしました。保存用と着る用の二着。
最も恋い焦がれていた聖地で、ずっと思い描いてきた100点満点の観光地Tシャツと出会う――このコレクションを続けてきてよかったと、初めて達成感を得ることができました。
春日太一
1977年東京生まれ。時代劇・映画史研究家。日本大学大学院博士後期課程修了。著書に『時代劇は死なず! 完全版』(河出文庫)『仁義なき日本沈没』『市川崑と「犬神家の一族」』(以上、新潮新書)『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』『仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版』『美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道』『泥沼スクリーン これまで観てきた映画のこと』(以上、文藝春秋)など多数。
春日太一
観光地Tシャツのすすめ
2019.09.30(月)
文・モデル=春日太一
撮影=佐藤 亘
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