ゴーギャンとブレルの足跡を
たどってアツオナの町へ
ヒバオア島は標高1,276メートルのテメティウ山が侵食して生まれた火山島だ。だ。
面積320平方キロメートルに7つの村があり、人口はおよそ1,800人。その多くが南部の中心地アツオナの町に暮らしている。
画家ゴーギャンや詩人にして俳優のジャック・ブレルが暮らしていたのも、中心地のアツオナ。
背後にテメティウ山とフェアニ山の1,000メートルを超す高峰がそびえ、タアアオ湾の穏やかな入り江に面している。
アツオナの村には「ゴーギャン」という名のよろず屋さんや、石の彫像のティキが並んだ広場、工芸品を地元アーティストが持ち寄る「ファレ・アルチザン・アツオナ」、そしてトラックで野菜や卵を販売にやってくる移動マーケットも。
そんな村の真ん中を裸馬に乗った島民が通り過ぎる。
アツオナ村の観光のハイライトは、ゴーギャン博物館。ゴーギャンの作品のレプリカ群やバイオグラフィ、画家仲間へ送った書簡などが展示されている。
敷地内には、“快楽の家”と呼ばれる、彼が生前暮らしていた家も再現されている。
高床式の家に入ると、まずはベッドルーム、そして陽射しが差し込む広々としたアトリエへ。
一画には描きかけのキャンバスと絞りだされた絵具、筆立てが無造作に並んでいる。
また、同じ敷地内にジャック・ブレルにまつわる展示エリアも。巨大な倉庫のような建物内に、彼の歌声が流れ、彼が愛した「ジョジョ」という名の双発飛行機が中央に鎮座している。
多才なブレルはシャンソン歌手であり、詩人であり、俳優であり、腕利きの飛行家でもあった。ヒバオア島ではタクシー飛行機として働き、島民も大いに助かったという。
ちなみに彼が最後に録音した18曲はヒバオアでの日々を歌ったものだが、アルバムには12曲を収録、残りの6曲は永遠に発表されることはないそうだ。
二人とも、アツオナの町と太平洋を見渡す丘の上の「カルヴェール墓地」に眠っている。
「カルヴェール」とはフランス語で「厳しい試練」。その名にはそぐわない、雄大な絶景が目の前に広がっている。
2019.09.02(月)
文・撮影=古関千恵子