有休を使って
映画を撮りました
――そして、13年にはカンヌ国際広告祭 ヤングライオンFILM部門メダリストを受賞するなど、広告業界で活躍されますが、自身にとっての転機は?
短編『そうして私たちはプールに金魚を、』(以下『プー金』)を撮ったときです。あるとき体調を崩して仕事を休んでいたときに十数年ぶりに「やっぱり映画を撮ろう!」と思って、有休を使って撮りました。
映画を撮りたくても広告の世界から抜け出せない僕の素直な気持ちを、映画の中に出てくる埼玉県・狭山を抜け出せない少女たちの姿に込めました。
――そんな『プー金』は、第33回サンダンス映画祭ショートフィルム部門でグランプリを受賞しました。
ほかの映画祭にも応募したんですが、まったく反応がなかったですし、何のコネクションもなかったので、この結果にビックリしました。
それで、賞を獲れたということよりも、「自分が正しい・面白いと思っているものを、また作っていいんだ!」という気持ちになり、次回作のイメージが膨らんでいきました。
――そして、長編デビュー作『WE ARE LITTLE ZOMBIES(ウィーアーリトルゾンビーズ)』を手掛けますが、設定やキャラは違っても、テーマ性や「まるでゾンビのように生きている4人」が主人公であることなど、『プー金』の続編的な意味合いもありますね?
『プー金』を上映したときに、「短編じゃないと成立しない」「この監督は短編しか撮れない」という意見もありました。だから、あえて短編と同じ話法やテンションで長編をやりたかったんです。
人数に関しては、あえて意識してません。「ファイナルファンタジー」のゲームのパーティメンバーも4人ですし。
2019.06.14(金)
文=くれい響
写真=松本輝一